光る電球
(写真=PIXTA)

19日、中部電力を除く電力9社が、来年1月の電気料金を引き下げることを明らかにした。これは各電力会社が燃料コストなどを元に電気料金を算出し、国の認可を受けて毎月発表するものだが、来年4月からはこのような報道は姿を消すことになりそうだ。

2016年4月より家庭向けなどの電力の小売全面自由化がいよいよスタートするためだ。1995年の大口需要家向けの自由化を皮切りに、8兆円規模の電力小売市場の完全自由化が迫っている。

経済産業省の資料によると、11月24日時点で66社が「小売電気事業者」として登録済みとなっている。電力小売り自由化により、東京電力などの地域電力会社だけでなく、さまざまな会社が一般家庭に電気を供給できるようになる。

登録済みの企業全てが実際に一般家庭への販売を決めているわけではないが、現在審査中の会社も数多くあるとみられ、来年4月の自由化に向けて新規参入はまだまだ続きそうだ。それでは、電力小売り自由化でどのような企業に注目すべきだろうか、以下でみていこう。


異業種企業が続々参入、その狙いは?

登録事業者の顔ぶれを見ると、ガス、石油などの大手エネルギー関連や95年以降の大口電力参入業者(PPS)、太陽光発電を手がける企業が多いが、商社や物流、事務機販売、インターネット・プロバイダーなどの異業種企業も見受けられる。発電設備を持たない企業は、発電会社から電気を購入して再販する。

11月初めに日経トレンディが発表した恒例のヒット予測ベスト30では「新電力トリプルセット割」が来年の第1位にランクされた。このトリプルとは、電気+ガス、ガソリン、交通+通信などの3点セットを意味する。異業種企業が参入する目的はまさにここにある。

既存の電力10社と携帯電話会社にとってセット割での提携はお互い「渡りに舟」。特に、安倍政権から料金が割高との批判を受ける携帯電話会社は電気料金をセットにすることで家計負担を減らせるとアピールできる。ソフトバンク <9984> が東京電力 <9501> との提携を決めたほか、KDDI <9433> も「auでんき」で関西電力 <9503> と、NTTドコモ <9437> は中部電力 <9502> と連携するとの見方が有力だ。

家庭では好きな会社から電気を買えるようになる。例えばこれまで東京電力しか選択肢のなかった関東の住人は関西電力や新規参入業者と契約できる。料金は従来の規制がなくなり自由競争で安くなると見込まれるうえ、携帯電話やガスなど他の商品とのセット割引や、多様な生活パターンにあわせた料金プランなどが提供される見通しだ。

ただ、電力小売り自由化で電気料金は大幅に安くなるとも限らない。発電には燃料費だけでなく多額の設備が必要なうえ、電力小売りは顧客対応にもコストのかかる薄利多売の商売。価格で大きな差をつけられないのが実状だ。このため、小売り会社の勝負はセット割引で決まるとの見方がもっぱらだ。


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