(写真=PIXTA)

日本政府観光局のデータによると、2015年1月から10月の間に日本を訪れた外国人の数は1600万人を超え、昨年の同期間を48%上回った。中国や韓国、台湾、香港、タイなどからの外国人旅行者が急増しているのが最大の要因だが、マレーシアやシンガポールなど、イスラム圏からの旅行者も増加している。

人口増加や経済成長に伴って、2030年には1000兆円規模の巨大市場になると予想されているイスラム圏。東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、今後さらにインバウンド効果が期待されている中、「ハラルマーケット」と呼ばれているこの市場を見逃す訳にはいかない。

キーワードは「ハラル」

「ハラル」はアラビア語で「許諾された」という意味。つまり、イスラム教の教義に徹底的に沿っていると判断された商品やサービスのことを指す。

例えば、イスラム教の規範であるイスラム法において、不浄とされる豚や精神を乱すとされるアルコールは、いずれも口にすることを一切禁止されている。豚肉や豚骨から抽出したエキスやアルコールを用いた料理、調味料などの摂取も許されていない。食材そのものだけではなく、食材の保管や輸送、加工、調理などもイスラム教に則って処理される必要がある。

厳格な審査によって「ハラル」であると認証された商品には、「ハラルマーク」が付与される。イスラム圏の巨大市場でビジネスチャンスを得るためには、この「ハラル」への対応が必須なのだ。

多岐にわたる業界が積極的にハラル対応「ハラル関連銘柄10選」

すでに食品・飲料品はもとより、外食、化粧品・医薬品や日用品、スーパー、物流など、広範な業界で積極的なハラルへの取り組みが始まっている。まずは外国市場で「ハラル」を実体験することが、近未来のインバウンド対応への必須条件だと言えるのかも知れない。ここでは代表的な10例について、取り組み内容を簡単に紹介しておきたい。

1.ヤクルト <2267>

乳酸菌飲料を独自の販売手法で展開する同社は、古くからハラル認証を取得してマレーシアやインドネシアなどでの販売を拡大している。

2.日清食品 <2897>

同社は豚肉由来のものを一切使わないハラル認証を得たインスタントラーメンを、インドネシア向けに製造・販売している。また、日清オイリオ <2602> は食品に使用する乳化剤でハラル認証を取得している。

3.ユーグレナ <2931>

微細藻類ミドリムシを大量培養して機能性食品やヘルスケア製品、バイオジェットの燃料に活かす技術を確立した同社は、マレーシアでミドリムシとクロレラについてハラル認証を取得。自社ブランドのジュースや化粧品、ペットフードなどの拡販を目指している。

4.マルハニチロ <1333>

同社は機能性食品についてハラル認証を取得している。また、同社に製品を卸している林兼産業 <2286> は、マレーシアで合弁会社を設立、ハラル認証を取得した魚肉ソーセージの販売を開始している。

5.ゼンショーホールディングス <7550>

牛丼チェーン「すき屋」を展開している同社は、マレーシアの調理工場のハラル認証を取得、これに基づくメニューを顧客に提供している。今後は店舗のハラル認証取得も視野に置いた事業展開を図る方針だと言う。

6.グルメ杵屋 <9850>

同社は、関西国際空港にそば業態の「信州そば処 そじ坊」2店舗、成田国際空港第1ターミナルにうどん業態の「自家製麺 杵屋麦丸」、成田国際空港第2ターミナルには和食業態の「あげたての味 天亭」など、計4店舗をハラル認証レストランとして営業している。

7.資生堂 <4911>

同社はマレーシアでハラル認証を取得しており、マレーシアやインドネシアでスキンケア商品を販売している。拡大を続ける東南アジアの化粧品市場を睨んでのことだ。

8.大正製薬ホールディングス <4581>

市販薬最大手の同社は、マレーシアに栄養ドリンクの工場を設立して製造・販売を行っているが、現地のニーズに応えることによる販路拡大策としてハラル認証を取得している。

9.イオン <8267>

総合スーパーを展開する同社は、マレーシアにプライベートブランド商品の開発会社を設置しており、現地でハラル認証を取得した商品をマレーシアやインドネシアなどで販売している。

10.日本通運 <9062>

世界規模で物流を展開する同社は、マレーシアで物流のためのハラル認証を取得するためマレーシア政府の専門機関に申請を行なっている。マレーシア国内の陸送や、周辺国など国際物流へ参入する準備の一環だ。 (ZUU online 編集部)