初詣
(写真=PIXTA)

金運を祈ること――それは単なる神頼みではなく、古来、継承されてきた人々の「生」に思いを寄せるものであるべきだ。だから、「お金」ではなく、物心両面の「豊かさ」を願おう。そのような謙虚な心で手を合わせるとき、結果的にお金もやってくるだろう。

「困難に屈しない力」にあやかる

中国や四国の地は、かつて朝廷にも匹敵する強力な王朝が存在したともいわれ、また、権勢を振った豪族が中央から追いやられた場所でもあるという。その1つが出雲の地だが、出雲大社がいまなお、伊勢神宮と並ぶ日本の代表的な神社とされることを考えれば、それらの地にある神社は「困難にも屈しない力」を与えてくれる気がしてくる。金運を得ようというとき、そのようなネバーギブアップの心境がまず必要だ。ここで紹介する神社で無心に手を合わせ、古代の人々の気力をいただいてみてはいかがだろうか。

金持神社 使用済み財布のお祓いも

鳥取と岡山の県境近くにある金持神社は、「金持」と書いて「かもち」と読む。「かねもち」とも読めるため、金運を求める参拝者を全国から集めている。主祭神の天之常立尊(あめのとこたちのみこと)は国土経営、開運、国造りの神であり、その点でも金運に御利益ありと考えていいだろう。

絵馬がかけられた場所には、金運を願う絵馬のほか、大金を得たことを報告するお礼参りの絵馬もぶらさがっていることから、霊験あらたかと考えてもよさそうだ。

日野町観光協会も兼ねる金持神社札所では、お守りのほか、幸せの黄色いハンカチや財布、金持米や金持味噌、金持酒など、さまざまな開運グッズを販売している。また、使用済みの財布をお祓いする「財布お祓い」が年4回行われている。

金持神社(かもちじんじゃ)
鳥取県日野郡日野町金持1490 TEL.0859-72-0481

吉備津彦神社/吉備津神社 「桃太郎」のリーダーシップにあやかる

どちらも大吉備津彦神に関係する神社であり、一方の神社だけに参拝するのは「かた参り」といい良くないとされる。

神話では、大吉備津彦神がこの地に住む鬼を退治したといわれ、これが桃太郎伝説のモデルとなっている。吉備国には多くの古墳や遺跡があることから、この神話は古代に瀬戸内海の海運を支配した一大王朝の存在が反映されたものと考えられていいだろう。

その王国はよほど強力だったようで、大化の改新の後、吉備勢力の力を恐れた朝廷は「備前」「備中」「備後」とこの地を三分割した。このうち、備前一宮に置かれたのが吉備津彦神社、備中一宮に置かれたのが吉備津神社だ。そこで、この2つの神社を参拝する者は、古代吉備王朝を率いた大吉備津彦神=桃太郎のようなリーダーシップにあやかれるかもしれない。

大吉備津彦神はこの地に製鉄を広めたといわれ、そこから産業の神ともされている。和歌において「吉備」の枕詞が「真金吹く」であるのは、真金(鉄)を吹く(生産する)というところから。それに関連して大吉備津彦神を祀るこれらの神社は金運全般に御利益があるという。特に製造業の人はここを参拝し、日本の物造りを支えてきた先人たちに思いを馳せてみてはいかがだろうか。

吉備津彦神社(きびつひこじんじゃ)
岡山市一宮1043 TEL.086-284-0031


吉備津神社(きびつじんじゃ)
岡山市北区吉備津931 TEL.086-287-4111

出雲大社 古代の息吹を実感できるパワースポット

伊勢神宮と並んで日本を代表する神社。2014年に宮司家の千家国麿氏と皇族の高円宮典子女王が結婚したことは記憶に新しい。

出雲大社には4つの鳥居があり、参拝時にはやはりそのすべてをくぐることが望ましい。第一の鳥居は鉄筋コンクリート製の大鳥居で、第二の鳥居は木造の鳥居。最寄り駅はこの2つの鳥居の間にあるので、参拝時にはそこから第一の鳥居まで戻って順にくぐったほうがいいだろう。

第二の鳥居の周辺では昔、市が立ったり芝居小屋が来たりして人が集まってきたため、「人の勢いが集まる場所」という意味で「勢溜」と呼ばれる。参道はここが一番高い場所となるため、ここを「上がってきた勢いが溜まるパワースポット」と考える人もいるようだ。

ここから参道は下り道となり、途中の右手方向に小さな社が隠れるように建っている。これは祓社(はらえのやしろ)と呼ばれ、我々が知らぬ間に犯した心身の穢れを祓い清めてくれる場所とされる。第三の鉄製の鳥居をくぐる前にここで心身を清めておこう。

第四の鳥居をくぐると拝殿となるが、この銅製の鳥居に触れると金運が上がるといわれており、多くの人が触れたためか手の届くあたりの位置が磨かれたように光り輝いている。この鳥居は1666年に毛利綱広によって寄進されたもの。由来がびっしりと刻まれているので神頼みだけでなく、この神社の壮大な歴史にも思いを馳せてみてはいかがだろうか。

出雲大社(いづもおおやしろ)
島根県出雲市大社町杵築東195 TEL.0853-53-3100

伊豫豆比古命神社 「守り金」で生業に励むことを約束する

縁起開運・商売繁昌の神様として崇敬を寄せられている神社で、「椿神社」「お椿さん」との愛称でも知られる。社名にもなっている伊豫豆比古命のほか、愛比売命(えひめのみこと)という女神も祀られており、この神名から「愛媛」の県名が名付けられた。なお、都道府県名で神名を使用しているのは愛媛県のみである。

2012年には御鎮座2300年祭が行われるなど、その歴史は大変古く、旧正月7~9日に行われる「椿まつり」は数十万人が訪れる四国一の大祭となる。

興味深いのは、この祭りで行われる「貸銭神事」。これは、神社から守り金(20円)を借りて、翌年、倍額にして返すという行事だ。守り金は誰でも借りることができ、一年間、生業に励み、少しでも多く返せるように頑張ることを約束する意味があるという。

安易に金運を願うのではなく、そのための努力を約束するという心の姿勢こそが、物心両面の豊かさをもたらしてくれるのではないだろうか。

伊豫豆比古命神社(いよずひこのみことじんじゃ)
愛媛県松山市居相2-2-1 TEL. 089-956-0321

(ZUU online 編集部)