すっかり市民権を得たNISA(少額投資非課税制度)が2016年から大きく変わる。
2015年にも実は地味な制度変更がおこなわれていた。同一の勘定設定期間内であっても、年単位で金融商品取引業者等を変更することが可能になったことに加え、NISA口座を廃止した後にNISA口座を再開設することが可能になり、使い勝手の向上が図られている。
しかし、今年の制度変更はかなり大がかりなもので注目度も高い。年間投資上限額が現行の100万円から、120万円に引き上げられる。さらに、これまでの成人対象のNISAに加え、ジュニアNISA制度が創設される。とりわけジュニアNISAは相続増税に伴い贈与が関心を集めていることと相まって高い関心が集まっている。また、新聞などでも「ジュニアNISAに向いている金融商品」と銘打って多くの特集記事が組まれている。そこで、以下ではどのような金融商品がジュニアNISAに向いているのかを見ていく。
そもそもジュニアNISAとは
ジュニアNISAの内容を理解すること無しに、ジュニアNISAに向いている金融商品について論じることはできない。簡単にジュニアNISAについておさらいしておこう。若年層への投資のすそ野を拡大し、「家計の安定的な資産形成の支援」および「経済成長に必要な成長資金の供給拡大」の両立を図ることが制度創設の趣旨だ。とりわけ高齢者に偏在する膨大な金融資産を成長資金へと動かす契機となることが期待されている。
ジュニアNISA口座で購入した上場株式・株式投資信託等の配当金・分配金・譲渡益が、最長5年間非課税非課税となる点は現在の制度と同じだ。ジュニアNISA口座で投資できる金額は、年間80万円までで、16年から23年の8年間投資が可能だ。ただし口座開設者が20歳に到達するまでは非課税で保有が可能だ。
ジュニアNISA口座からの払出しは、子どもが、3月31日時点で18歳である年の前年の12月末までできない。18歳未満で払出す場合には、全部解約(ジュニアNISA口座の廃止)のみ可能で、ジュニアNISAで享受した過去の利益に対し課税される。このようにジュニアNISAの最大の特徴は原則として18歳まで払い出しが制限され、年齢によっては非課税投資期間が最長20年近くにまで及ぶという点だ。
ジュニアNISAに向いているのは「長期投資に耐えうる金融資産」
上述の通りジュニアNISAの特徴は長期投資である。現行のNISAでは、投資家は従来と同様の投資行動を取ることが多く、NISAでも従来と同様の投資信託や株を保有している投資家が多いとされている。100万円の投資枠をどのように活用するかを夜も寝ずに考えたところで、一体どれほどの違いが生じるのだろう。そもそも利益が出なければ非課税のメリットなど何も無い。非課税期間、目一杯保有し続けたとしてもNISAの恩恵を受けられる保証は何も無いのだ。とりあえずNISA口座を利用して投資信託や株を買い、利益がでたので、すでに売却してしまった人も多いはずだ。
その一方で ジュニアNISAの場合は投資家は従来とは異なった投資行動を取ることが容易に想像出来る。制度そのものが長期投資を前提としたものだからだ。簡単に言えば、ジュニアNISA利用のポイントは長期投資に耐えうる金融資産を購入することにつきるといえる。「長期投資に相応しい投資信託や高配当の株式を投資対象に選びましょう」という結論になる。誰がどう考えても、結局ここに行き着くのだ。
もう少し具体的なアドバイスを行っている場合なら、手数料の安い投資信託、バランス型ファンド、ETF、配当利回りの高い株式が推奨されている。10年前から、現在に至るまでの相場を思い返して欲しい。06年1月にはライブドアショック、08年にはリーマンショックがあり、新興国経済の発展、資源ブームがあった。10年後の経済状況を予想すること自体がナンセンスで無意味なのだ。10年前の人気投信が現在も高い人気を維持できているだろうか。ましてや20年後を予想することなど、単なる遊びだ。
こうした状況を考慮すれば、国内外の株、債券、不動産に分散投資するバランス型ファンドがジュニアNISAの対象としては無難であることは間違いないだろう。その中でも、資産配分比率を機動的に変更するアロケーション型ファンドが最も無難な選択ということになるだろう。
そもそも何のためのジュニアNISAなのか
若年層への投資のすそ野を拡大し、「家計の安定的な資産形成の支援」および「経済成長に必要な成長資金の供給拡大」の両立を図ることが制度創設の趣旨だ。
しかし、実際にこの制度が使われるのは相続対策としての色合いが濃くなるだろう。相続増税の影響から贈与に対する関心が高まっている。いかに計画的に贈与を行うかが相続対策のポイントとなるのだが、預金で贈与を行えば名義預金の問題が発生する。ところが、ジュニアNISAなら何の心配も無く贈与できる。金融資産をため込んだ高齢の資産家が相続対策に利用するのに相応しい制度というのが実態ではないだろうか。(ZUU online 編集部)