「TPP」という言葉が初めてニュースを騒がせてからだいぶ月日が経ちました。また、先日のオバマ大統領来日に際しても再度TPPの話題が上がり残念ながら市場コンセンサスを下回る進捗に終わりましたが、これから目が話せないテーマの1つです。TPPに関しては定期的に様々な議論が交わされています。その規模の大きさからいって日本のマーケットを大きく動かす力になることでしょう。しかし、いざ動き出した時にいち早く反応を示すであろう銘柄はどのようなものなのでしょうか?いまさら聞けないという方に、恩恵を受ける業界や注目株についてまとめてみました。
TPP参加で株式市場はどう変わるのか
TPPについての議論は経済、金融業界にとどまらず至る所で議論されています。『日本から農家がいなくなって日本米が食べられなくなる』『日本の国民皆保険制度が崩壊して保険料と医療費が高騰する』『医療、介護サービス業界から日本人が消える』など俎上にのぼる話題も様々です。どの領域でどういった措置が取られるかというのは、現時点ではまだまだ調整段階としか言えないのが現状です。しかし参加に向けて具体的な動きが出てくれば、国内マーケットにも少なからず変化が起きると思われます。
今回はその変化にいち早く反応を示してくるであろう、TPP関連銘柄をご紹介します。
1 聖域5品目
TPPの中でも関税の維持を目指すいわゆる『聖域5品目』。 TPPでは100%関税を撤廃するのが原則ですが、参加国はそれぞれ関税を撤廃したくない分野を持ちます。日本も米、麦、砂糖、乳製品、牛/豚肉の5品目を最重要分野と位置づけ、これらを保護する姿勢を貫いています。現在のコメの関税は402円/kg、牛肉38.5%、豚肉361円/kgなどとなっています。 仮にこれらの関税がTPPのルール通り100%撤廃されると日本の農家は大きな打撃を受けることになる反面、一方で消費者にとってはこれらに関連する食品の価格が下がる事で恩恵を受けられるという面があります。そして製品の原料や農産物、食料品を海外から輸入している食品、小売り関連企業にとっても輸入品が安く調達可能になることで利益率アップが期待でき、追い風となります。
大きなメリットが期待される主な食品セクターの企業は、日本ハム、伊藤ハム、森永乳業、明治HDなど。小売りセクターでは、セブン&アイHD、イオン、ファミリーマート、ローソン。大手外食チェーンでは売上高国内首位の日本マクドナルドHD、2位のゼンショーHD、他にも吉野家HD、ワタミなどが挙げられます。さらには再上場が近いと言われている、売上高国内3位で『ガスト』『バーミヤン』などの複数のファミレスを運営するすかいらーくグループの動きにも注目が集まりそうです。
2 農業関連銘柄
日本は聖域5品目を保護する姿勢を貫くと同時に、農業成長戦略として農林水産業の国際競争力を強化することを決定しました。2009年に成立した改正農地法をきっかけに、セブン&アイHD子会社のイトーヨーカ堂が2015年までに管理する農場の面積を2倍の200ヘクタールに拡大すると発表するなど、多くの企業や大規模農業法人による農業規模の大型化が今よりもさらに進むと予想されています。そうなれば自ずと農作物を生産するのに必要な農機や農業関連品の需要が高まることになるでしょう。
農機のクボタ、井関農機や農薬の日本農薬、クミアイ化学工業。肥料関連の日産化学工業、コープケミカル。作物の種苗などを手掛ける企業としてはサカタの種、カネコ種苗、ベルグアースが挙げられます。
3 医療関連銘柄
TPPへの参加によって国民皆保険制度が崩れるかもしれないというのをよく耳にします。また医療分野では日本の医療に市場原理が導入されることになり、混合診療や医療サービス分野でも株式会社が参入し営利目的での運営が解禁されるとも言われています。医療分野において市場原理が働くというのは、国民にとってみればやや否定的に捉える向きが多いですが、関連する企業にとっては更なるビジネスチャンスが生まれることを意味します。
医療機器分野ではコニカミノルタ、オリンパス、テルモ、富士フィルムHD、サービス分野ではシップヘルスケアHD、ニチイ学館など。また保健分野ではセキュリティ関連企業のセコムが自由医療保険の販売に参入するなど、TPP参加表明と同時に、医療、介護、健康関連産業が日本の新成長戦略における牽引産業として明確に位置づけられたことで今後も様々な動きが見られる分野になると思われます。