住宅ローン,年収
(写真=Thinkstock/Getty Images)

マンションや戸建てを購入する際に、「今の収入で金融機関からローンを借りられるのか」「手持ち資金がないが借りられるのか」といった相談は少なくない。とりあえず、ローンが借りられればいい、借りてしまえば何とかなる、という気持ちが先行するのであれば購入はやめた方がいい。というのも、住宅ローンを借りる際には、「いくら借りられるか」よりも「いくらだったら住宅ローンを返せるか」の方が重要だからだ。

借入限度額まで借りてしまうと、不測の事態が起こったときに家計に余裕がなくなり、家計破綻を招きかねない。そこで、住宅ローンは年収の何割までが正解なのか、実際の相談事例から様々なケースを見ていきたい。


住宅ローンと年収の関係:「返済負担率」で借りられる金額を知ろう

住宅を購入する際、多くの人が気になるのが、「自分の場合、いくらローンが借りられるのか」ではないだろうか。

ローンを借りる際に重要なのは、「返済負担率」だ。返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示すもの。金融機関では年収のランク別に20%~35%の返済負担率の上限を設定している。

返済負担率の計算式を示すと、

(住宅ローンの年間返済額+その他の借入金の年間返済額)÷年収×100=返済負担率

上記の計算式に、年収450万円で、毎月のローン返済額が9万円(年間返済額108万円)を当てはめると、

(9万円×12か月)÷450万円×100=24%

上記の通りとなる。返済負担率が25%以内なら「安全圏」と言えるだろう。ただし、その他のローンがあれば合算されるので注意したい。たとえば、車のローン月3万円、カードローン月1万円があるケースを想定すると、

(9万円+2万+1万)×12か月÷450万円×100=32%

上記のように返済負担率が32%と安全圏を超える計算となる。

ちなみに、ここでいう年収とは、あくまでも税金や社会保険料を含めた給与の額面金額のこと。実際の住宅ローンの支払いは、税金や社会保険料を払った後の手取り金額でやりくりしなくてはならないため、額面金額では返済負担率が25%以内だとしても、手取り金額で計算しなおすと、30%近くになってしまうというケースも少なくないので注意が必要だ。

実際の相談事例を紹介「ファミリー編」

では、ここからは筆者が携わった実際の相談事例から、ライフスタイル別にそれぞれのポイントを見ていこう。まずは、ファミリー編から見ていきたい。

金融機関の審査:返済負担率35%、借入可能額3622万円。
当時 夫35歳 年収550万円、妻37歳 専業主婦、子供 6歳と1歳
駅より徒歩15分 新築マンション77㎡ 3980万円、
管理費 2万2000円、修繕積立金 7000円
駐車場 1万2000円、固定資産税 約14万円
貯蓄残高;夫 300万円、妻 1100万円(妊娠と同時に退職)
両親からの援助 300万円

頭金980万円、住宅ローン借入額3000万円、
金利:当初3年間固定1.0%  毎月支払額:8万4685円
金利:4年目より固定1.65% 毎月支払額:9万3297円
手持ち貯蓄残高:720万円
手取り収入   32万円(賞与2回65万円)
貯蓄       5万円(賞与時40万円)
住宅ローン   8万4000円
管理費・修繕費 2万9000円
駐車場     1万2000円
生活費支出   10万5000円(食費・光熱費・通信費・こづかい他)
教育費      4万円(学資保険含む)

このケースの住宅ローンの返済にかかる割合を調べると「毎月の住宅ローン8万4000円×12カ月=100万8000円」で、返済負担率は年収の18%となる。4年目から金利に変更があっても20%だ。

年間で貯蓄が100万円、生活費出費には生命保険も含まれている。今では収入も上がり貯蓄もこれ以上にできており、すでに2回の繰り上げ返済をしている。60歳定年時にローンの残債を一括返済する予定だ。年上である奥さんの年金が先にもらえるが、65歳まで夫は嘱託員として働ける。上の子の美術大学の進学で学費700万円のうち学資保険300万円を使用、残りは貯蓄残高から取り崩していく。「毎月の家計の中から大きくかかる教育費等の捻出は避けたい」とのことだった。そのために手持ちの貯蓄を残しておいたのだ。

こちらの家庭は子供の教育費と夫婦の老後を重点に将来の不安を解消したいとのことだった。キャッシュフローをチェックし、将来にわたる収支を都度チェックしている。

単純に返済負担率だけ見ると、問題なさそうだが、住宅に関わる費用を含めて返済負担率を計算してみるとどうなるだろうか。管理費・修繕費・車庫代・固定資産税を合わせると年間52万円である。以上を加味して計算してみよう。

住宅ローン100万8000円+住宅に関わる費用52万=155万8000円
(年間)155万8000円÷(年収)550万円=27%

上記の通り、返済負担率は安全圏を超えてしまうが、30%には達していない。さらに慎重にいきたいなら、住宅全般にかかるもの、上記費用以外に火災保険・地震保険も合わせて返済負担率を確認するのが良いだろう。

実際の相談事例「夫婦共働き編」

次に実際の相談事例から「夫婦共働き」のポイントを見ていこう。

金融機関の審査:返済負担率35%、借入可能額4610万円。
夫31歳 年収400万円、妻28歳 年収300万円(夫婦合算収入で借入)
駅より徒歩1分 新築マンション55㎡ 3280万円、
管理費 1万2210円、修繕積立金 6000円
駐車場 2万5000円、固定資産税 12万円
貯蓄残高;夫 200万円、妻 300万円
両親からの援助 200万円
頭金 480万円、住宅ローン借入額 2800万円、
金利:全期間固定 1.65%  毎月支払額:8万7830円
手持ち貯蓄残高:220万円
返済負担率15%

共働きの場合、夫婦合算収入が可能で借入可能額も増え、夫婦のライフスタイルを重視すると通勤に便利な「駅近」を選ぶことができる。ファミリー編と違い、間取りは大きくないが、駅に近いだけ住宅関連ではほぼ同じくらいの金額となり、返済負担率も22%だ。

エリアにもよるが、駅から近い物件は資産価値が高いので、将来の家族構成に変更があった場合、売却してその資金をもとに別の物件の購入も考慮できる。返済負担率が低い分、貯蓄を増やすことが可能になり、繰り上げ返済や完済が早くできれば、老後にゆとりがもてる。

実際の相談事例「独身者編」

独身の場合は、部屋の大きさにこだわりがなければ安価で購入できたり、環境を重視したりすることができる。ただし、独身はライフスタイルが変更しやすいこともあるので、物件を選ぶ場合には売却したり、賃貸に出したりする場合を考えて、資産価値の高い物件を買っておくとよいだろう。

一生独身だと考えているなら、仕事を引退しても安心して暮らすことができるよう、将来の予算をたてながら、返済負担率をできるだけ10%代で抑えたい。家計に占める住宅費の割合が抑えられるほど貯蓄をする余裕が生まれ、貯蓄を増やしていくことができる。

予想外の出来事に備え、返済負担率は25%以内に

ファミリー編の実例では、しっかりと心配事を解消しながら、将来の不安に対応しているが、子供の教育費が増える時期にローンが厳しくなったり、夫の収入減で一気に家計が厳しくなったりといった予想外の出来事は誰にでも起こる可能性がある。親の介護も想定の一つと考えるべきだろう。遠方で通うのか、仕事を休んで介護するかで自分の収入も左右する。また、退職後もローン返済をしなくてはならないと、老後の生活を圧迫する。

想定外の出来事が起こったときや老後にローンの支払いを残さないためには、多くの金額を借り入れすぎないこと。そのためには、いかに貯蓄が準備できるかが重要である。

金融機関も不動産屋も将来については試算してくれないのが現状である。返済負担率は年収の25%以内が安全圏と言えるが、そのためには税金面だけでなく、ゆくゆくは相続まで係わるかもしれない大切な「マイホーム資産」「将来の生活設計」をシミュレーションしてくれる住宅ローン専門家、ファイナンシャルプランナーにお金を支払ってでも相談することが不可欠だ。

住宅ローンは年収の何割? の正解はライフプランを作成することから見えてくる。

森淑子 2級ファイナンシャル技能士・モーゲージプランナー
保育専門学校を卒業後、保育士勤務。結婚後、税務会計事務所に従事。住宅ローン専門のモーゲージプランナーの資格を取得。保育・会計・住宅ローンのトリプルで、子育て家族がお金に困らない気づきを与える為、個人事業開業。みんなの住宅ローン相談センターパートナー所属・㈱ケイプラネットにて活動中。 FP Café 登録FP。

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