(写真=PIXTA)
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子供の教育費や家計のやりくりのため、パートとして働く女性たちも多いが、彼女たちが気に掛ける2つの数字があるーー「103万円と130万円」の壁だ。

パートの年収が103万円を超えると、所得税か課税され、夫の配偶者控除に影響を及ぼす。一方、パートの年収が130万円以上のケースは、夫の扶養家族から外れ、健康保険を含む社会保険料をパートで働く妻が自己負担しなければならない。こうした制度の影響で、本来もっと働きたいと考えるパートの女性たちにとって、この数字が「壁」となって労働時間を抑制している。

こうしたパート妻たちに大きな変化が訪れようとしている。平成28年10月から「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」が施行されるためだ。現行の仕組みでは、パートの妻などが社会保険料を負担しないで済むケースは、正社員の労働時間の4分の3(所定労働時間が40時間の場合は30時間)に達しないと厚生年金に加入できないと定めている。この対象が、制度改正で見直されるのだ。

従業員501人以上の企業は要注意

新たに対象となるのが、週20時間以上勤務し、月額賃金8万8000円以上(年収ベースでいうと106万円以上)を稼ぐパート妻だ。さらに賃金だけでなく、雇用期間1年以上、さらに被保険者数が501人以上の企業で働いていることも条件となる。

厚生労働省が主要産業の労働者の賃金を、雇用形態、就業形態、職種、性別、年齢、学歴、勤続年数などに基づき、賃金構造の実態を詳細に把握するためにまとめた賃金構造基本統計踏査によると、女性のパートタイマーなど短時間労働者の時給は1012円だ。また、1日あたりの所定内実労働時間数は5.3時間で、実労働日数は月あたり17日となっている。

この平均モデルを用いて計算すると、女性の短時間労働者の週当たりの平均勤務時間数は、実労働時間日数(17日)に1日あたりの所定内実労働時間数(5.3時間)と12カ月をかけ、1年間の52週で割ると、約20.8時間。月収は約9万1200円、年収は約109万円となる。

同調査によると勤続年数の平均は5.8年だ。勤務先の被保険者数が501人以上であれば、短時間労働者として平均的な賃金を得るパート妻は新しい制度において、年収106万円の対象に含まれることになる。その数は、週20~30時間の短時間労働者約400万人のうち、約6%にあたる約25万人が対象となる見込み。

池田直子・社会保険労務士の試算によると、パート妻が週21時間、時給1000円で勤務した場合、勤務先の企業の被保険者数500人以下の企業と501人以上の企業で社会保険料の負担額が大きく変わるとのことだ。

この条件で勤務したパート妻の年収は109万2000円で、被保険者数500人以下の勤務先では、社会保険料負担は年額5460円であるのに対し、被保険者数501人以上の勤務先では16万5012円に跳ね上がる。所得税と住民税の負担額は、前者が年額1万8400円に対し、後者が5000円となる。

この結果、手取り年収は被保険者数500人以下の企業で働くパート妻の手取り額年額は106万8140円、被保険者数501人以上企業のケースでは92万1988円と両者の間で大きな差が生じる。企業規模が大きいケースで、手取り収入を維持するには、月13時間ほど追加で働くか、労働時間を週20時間以下に減らして年収を106万円未満に抑える必要がある。転職の機会があるならば、被保険者数が500人以下の会社に移ることも選択肢となりえる。

一方、将来の年金の受取額に関しては、老齢厚生年金に1年加入した場合、企業規模500人以下では受け取り金額は増加しないが、企業規模が501人以上では月額6446円の増額となる。

年金は自営業妻と会社員妻で差がくっきり

社会保険料と年金給付に関しては、自営業の妻と会社員の妻で大きな差が生じそうだ。両者がともに月収9万円で短時間労働をした場合、自営業の妻は国民年金に加入し、保険料を支払う第1号被保険者で、会社員の妻は夫に扶養される第3号被保険者で保険料の負担はない。

このパート妻が40歳から厚生年金に入ったケースを想定すると、自営業者の妻はこれまで国民年金に月当たり約1万5000円支払っていた保険料が、厚生年金保険料約7500円(1/2は勤務先の企業負担)に半減する。

これにより受け取る年金は、国民年金のまま40年間保険料を払ったときの老齢基礎年金が年78万円に対し、厚生年金では老齢基礎年金に加え、給与に比例した年金も支給される。60歳まで20年間の加入で、年11万4000円となる。65歳の女性の平均余命の88歳まで受け取ると、上乗せ額が260万円以上となる。

一方、会社員の妻は、同じケースでも厚生年金保険料約7500円と健康保険料約5000円を合わせて、月間1万2500円以上の社会保険料が新たな負担となる。60歳まで厚生年金に加入すると、保険料の負担は総額で300万円を超えるが、88歳まで年金を受け取った場合、260万円ほど受け取り額はアップするものの、支払った負担額を下回ることとなる。

この結果、支払う保険料と受け取る年金を自営業の妻と会社員の妻で比較すると、前者は負担が減り給付がアップする一方、後者は負担増となるものの、給付は負担額を下回ることとなる。

今回の制度改正は、約25万人の短時間労働者が対象となり、影響も少なくない。少子高齢化が進むなか、社会保険料の安定的な財源確保のため、今後も対象者の拡大は進んでいくだろう。家計を助けるために働くパート妻は、収入と負担のバランスを考慮して、働き方を見直す必要がありそうだ。(ZUU online 編集部)

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