2015年の上海株下落以降、百貨店や家電量販店で見られた中国人観光客の爆買い行動が弱まりつつある。この現象は、単純に株下落だけが要因ではなく、中国国内でネット販売が充実してきたことにより、中国国内でも日本製品が簡単に購入できるようになったためとも言われている。このように短期間で変貌を遂げた中国人の爆買い行動であるが、不動産においては続いているのであろうか。中国マネーによる不動産爆買いについて、その真相を探る。
中国やアジア圏内から日本の不動産投資が増加していた背景
そもそも、なぜアジアを中心とした外国人投資家が、日本の不動産に投資をし始めたのかについて振り返ってみよう。その背景には、アジア人投資家たちの自国での不動産価格が上昇しきっていることがある。中国では、2000年代に入ってから「炒房(チャオファン)」と呼ばれる活発な不動産投資が繰り返し行われてきた。そのため、例えば上海では10年間で物件価格が3.3倍にも高騰している。しかしながら、中国の国内では地方都市の不動産価格が下落し始めている。中国の不動産がピークアウトするのも、時間の問題と言えるかもしれないのだ。
また、中国や台湾国内の収益物件と比較すれば、日本の不動産の収益物件の利回りはまだまだ高い。中国、台湾国内では利回り1~2%台の物件も多く、日本の利回りは3.5%まで下がってきているとはいえ、彼らからしたら、高利回りに感じられるのだ。一方、日本人投資家にとって3%台というのは、今までの常識からすると低過ぎると感じる利回りだ。そのため、日本人投資家が二の足を踏むような物件であっても、アジアの投資家が購入していくという構図が続いている。
なぜ日本が注目されているのか
加えて、円安も日本の不動産を割安に見せている要因だ。また、中国人投資家はバブル崩壊という経験をしておらず、東京オリンピックまではこのまま不動産価格は上昇すると信じて購入しているケースも多い。彼らの投資行動は、キャピタル・ゲインを期待する部分も大きいのだ。
一方で、中国人による日本の不動産購入のなかに新しい潮流も現れ始めた。単純な投資ではなく、移住を目的とした不動産の購入だ。もともと、アメリカやカナダ、オーストラリアといった移民国家では、移住を目的とした中国人による不動産購入が多かった。中国で豊かになった個人富裕層たちが、税金の締め付けなどを敬遠し、海外に逃れるパターンだ。
このような移住の流れは日本にもやってきている。日本でも不動産購入をきっかけに、経営管理ビザを取得して更新を重ねれば、いずれ永住権を得ることができる。移住目的での購入は増えつつあるが、なかには本当に日本を気に入って購入している中国人も多い。彼らから言わせると、日本は安全で住みやすく、何よりも日本人は親切でフェアだそうだ。都市戸籍と農村戸籍という戸籍格差が現存している中国社会と比べれば、日本は住みやすい環境に思えるのだろう。
日本経済への影響
気になる点としては、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが中国からの不正資金流入について、監視を強化し始めていることだ。日本においては、まだ監視を強化するという方向には至っていない。そのため、今後は行き場を失った不正な中国マネーが日本に流入してくる可能性もある。それが、今までと同じ投資目的の「爆買い」なのか、不正資金の流入なのか、見分けがつかない部分が厄介であろう。
結局のところ、中国人による日本の不動産購入はまだ続いている。中国の景気が停滞しても、個人富裕層が資金を国外逃避させる先として日本を選べば、今後も日本への投資は続くものと思われる。今の日本では、中国人による活発な不動産投資が、不動産価格を牽引している。これが突然止まるようなことがあれば、不動産市況が一気に冷え込む可能性もある。難しい局面であるが、中国人による不動産の爆買いは今後も目が離せないといえるだろう。(提供: Vortex online )
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