将来を見据えた改修
ではどんなリフォームが彼らの関心を引くのだろうか。それについてはゴールデン・エイジ・リビングのワンダ・ゴッズ代表が詳しい。「アメリカにはAging inPlace(エイジング・イン・プレイス)というライフスタイルがあります。これは年を重ねても、今と変わらない生活を続けたいという生活様式のこと。そのためのリモデルを提案すべき」。
アメリカにはこのエイジングインプレイスというライフスタイルを理解し、長く、安全に、快適に住める家づくりをマスターした人に与えられる「CAPS」という資格まである。リフォーム事業者、ビルダーの資格取得者も多く、その数は約6000人。多くの経営者・従業員がこの「CAPS」を取得している証として、名刺の名前と一緒に記入するのがアメリカでは一般的。
なぜそのような家づくりがベビーブーマーに響くのか。ゴッズ氏は「例えば比較的若い層にとっては将来を見据えてリモデルしておけば老いた時の準備になる。比較的高齢な層にとってはケアサービスや介護施設に行かなくて済み、自宅で快適に過ごせる。リモデルコストの方が介護サービスを受けるコストよりも安くお得だから」と話す。
アメリカよりも高齢化が進行している日本でも、このエイジング・イン・プレイスというライフスタイルを実現する提案は、より重要性がありそうだ。ただ一点、提案には注意が必要だ。まだまだ元気で現役だと思っている人に対して、このような提案をすると「あなたは老いていますよ」というメッセージとして受け取られかねないからだ。
◆ユニバーサルデザインの例
美観にこだわりを
オーエンスコンストラクションのビル・オーエンス社長もエイジング・イン・プレイスを意識したリフォーム提案は簡単ではないと話す。「『安全な家にできますよ』という宣伝文句も、『私はまだ若いから関係ないわ』と取られてしまうことがあるので注意」。
オーエンス氏は30年以上にわたって、誰にとっても便利で快適さを感じられる「ユニバーサルデザイン」を取り入れたリフォームのプロ。エイジング・イン・プレイスというライフスタイルを実現したい顧客から高い支援を受けている会社の一つだ。同氏は自ら設計施工を手掛けるとともに、セミナー講師として、その知見を同業者にも広く伝える活動をしている。
ベビーブーマーに響くプランは、明らかに高齢者仕様であるということが見た目からは分からないものだという。例えば、「老後のために」とすぐに手すりを付けてしまうのではなく、必要になったらすぐに付けられるように下地を補強しておいたり、車椅子が必要になっても大丈夫なように通路幅を十分にとっておいたりと、そのような事前対策を考慮することもユニバーサルデザインにおいて重要なこととオーエンス氏は考える。
また、高齢化対応が重要だということをうまく伝えるフレーズとして「住宅の歳の取り方は人間と同じではない」という言葉をよく使う。「あなたが今、この家が暮らしにくいと感じたならば、あなたが老いたのではなく、家が老いたのです。だからリフォームしましょうという意味を伝えるフレーズです」。
このような言葉選びを慎重にするだけでも、ベビーブーマーの心を動かすことができるわけだ。オーエンス氏は業界団体を立ち上げ、安心して快適に暮らせるリフォームの啓蒙活動に乗り出している。「最高の見込み客」であるベビーブーマーたちが、次々と快適な家へとリフォームしていきそうだ。(提供: リフォーム産業新 聞1月05日掲載)
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