(写真=PIXTA)
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米国流、リフォーム需要創造のいま

三十数兆円といわれる米国リフォーム市場には、約100万もの事業者がしのぎを削っている。彼らの今最大の関心ごとは「ベビーブーマー」世代から、いかにリフォーム需要を開拓するか。

この世代の年齢は51~69歳で、米国内には8000万人もいる。その層は日本の約2.6倍。日本のメーンリフォームユーザーともぴったり重なる彼らは、どんな価値観を持ち、どんなリフォーム提案が求められるのか。イリノイ州シカゴにて、ベビーブーマーに詳しい専門家3人に取材を敢行。日本と同じく、透明性ある経営や高齢化対応が求められている。

米国で流行しているカラーミックススタイル。このようなプロの仕事を求めるのがベビーブーマー世代に多い
米国で流行しているカラーミックススタイル。このようなプロの仕事を求めるのがベビーブーマー世代に多い

6割「家にとどまる」

「ベビーブーマーはリフォーム会社にとって最高の見込み客なんです」。こう話すのは米国住宅市場に詳しいマーケティングウィング創業者のホアキン・エラゾ氏。ベビーブーマーは1946年から1964年の間に生まれた層で、有名人で言えばバラク・オバマ(54歳)、ビル・クリントン(69歳)ジョージ・W・ブッシュ(69歳)らがいる。

なぜ最高の見込み客なのか。エラゾ氏は「この世代は他の世代に比べて成功した世代なので、財力があるんです。彼らはお金があり、旅行、娯楽、趣味などへの出費も多い」と話す。さらに家族を持つ割合「世帯率」は7割を超え、国内平均より高い。そして、63%が「今の家にとどまりたい」と考えており、自宅や地域への愛着を感じているとエラゾ氏は言う。

また、ユニークなのは米国ではDIYが一般的だが、この層はプロを雇って本格的なリフォームがしたいという意欲が強いという。

ベビーブーマー世代の主な特徴

◆財力がある

他の世代よりも成功した人が多く、お金に余裕がある人が多い。DIYよりプロに改装を頼みたい傾向にある

◆今の家や地域へのこだわり

米国では移住が少なくないがベビーブーマー世代は多くの世帯で今の家、地域に住み続けたいという希望が多い

◆ネットに親和性がある

スマホ保有率が高く、なんでもインターネットで検索し、ソーシャルメディアも好む。ネットの口コミも重視する傾向

あいまいさを嫌う

懐が豊かで、家族がいて、家にとどまりたければ、リフォームの出費が期待できる。それが8000万人もいれば、リフォーム会社の期待は否応なしに高まるわけだ。

「ただし、そう簡単にリフォーム受注が取れるわけではない」とエラゾ氏は指摘する。なぜなら、他の世代とコミュニケーションの仕方や、金銭感覚、コアバリュー(何に価値を見いだすか)が異なるため、接客や営業、マーケティングに工夫が必要だという。

特に「透明性」が重要で、プラン内容、リフォームの工程などは明確に伝えないと不満がられる。見積もりの根拠もあいまいなものは敬遠されるという。とりわけこの世代はスマホ保有率が高く、なんでもネットで事前に調べるのが当たり前。あいまいで不透明な営業では契約につながりにくい。

また、彼らはソーシャルネットワーキングが好きで、ツイッター、フェイスブック、ピンタレスト、ハウズなどを使いこなし、ネット上の口コミも重視する。

◆エイジング・イン・プレイスとは?

年齢や収入、能力など関係なく、各個人が独立して安全に、かつ快適に自分の家庭や地域社会で生活することを指す