(写真=PIXTA)
1998年に松井證券が国内初のネット取引サービスを開始してから、すでに20年弱が経過した。この間、ネット証券は従来型の対面・電話取引と比較して手数料が安いことを強みに、多数の顧客を獲得してきた。たしかに顧客にとって手数料の安さは大きな魅力だが、一方で気をつけておきたい点も存在する。ここではネット証券を利用する際の注意点を取り上げてみたい。
ネット証券の注意点 その1:取引範囲の制約
ネット証券は画一的なシステムによりサービス提供を行うため、店頭などでの対面・電話取引と比べ売買可能な金融商品や取引手法の範囲は制約される。
大和証券を例にすると、端末の種類によりネット取引(オンライントレード)の取扱商品が大きく異なってくる。パソコンでは中国株、個人向け国債、外債、株式先物・オプションなどの売買ができるが、スマートフォンやタブレットではこれらの取引を行うことができない。
またパソコンでも中国株以外の外国株、出来高加重平均取引(VWAP:当日の金融商品取引所で成立した価格を銘柄ごとの出来高で加重平均した価格で売買するもの)、転換社債、円建債券などは取引できない。
なお、コンタクトセンターとの取引を主とする「ダイワ・ダイレクト」コースでは店頭では取引できる新規公開株式の割当など申し込むことができないなど、対面・電話を比べた場合でも取引できる範囲は異なる。
ネット専業証券を見ても、例えば松井証券では外国株、債券(国債、円建社債、外債など)、米ドルMMFを除く非上場投資信託(大半の公募投信)は取り扱っていない。
これらの違いを踏まえて、自らの投資目的やスタイルに合った証券会社や取引方法を比較した上で選択することが重要となる。
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ネット証券の注意点 その2:アドバイザーの不在
ネット証券では基本的に専属の担当者がいないため、特定銘柄の売買を薦められたり相場観を直接的に示されたりすることはない。自らの投資哲学や戦略を確立している人にとっては、余計な雑音が入らないありがたいシステムかもしれないが、初心者にとってはプロのアドバイスを受けられないのは不安なものではないだろうか。
アナリストレポートなど、不特定多数に向けられた情報をかみ砕いて伝えてもらいたい人にとっても、ネット証券は向かないと言える。相場の大幅な下落局面などで一喜一憂してしまう心配性の人も、相談相手がいる対面・電話取引の方が安心できるだろう。
ネット取引は手軽に安い手数料で行えるため、ゲーム感覚で安易な短期回転売買を繰り返す状況に陥ってしまう懸念も考えられる。対面・電話取引であれば証券会社が個別に回転売買の適切性をチェックするところが、ネット取引ではシステム上の画一的な規制しかかからないことにも留意したい。
ネット証券の注意点 その3:システムリスクの存在
ネット取引には場所や時間を選ばないメリットがある一方、対面・電話取引と比べシステムリスクが大きくなるというデメリットが発生する。株式など上場有価証券の取引システムは東証などの金融商品取引所が運営するものと、それを取り次ぐ証券会社が投資家に対して提供するサービスに大別される。
前者は取引所会員である全証券会社が利用するもので、何らかのトラブルが発生した場合は取引停止などの措置が発動され、すべての投資家に同じ影響が生じる。一方、後者は必然的にそれを利用する顧客のみが被害を受けることになる。後者のサービスを利用した投資家限定のリスクだが、スムーズに売買できるか否かは証券会社のシステムの強さに左右される。とくに引け間際の発注の場合、証券会社へ口頭で直接発注する方が確実に取引できる可能性がある。
また、個人情報の漏洩やデータ改ざんリスクについてもネット取引、対面・電話取引の別、さらには証券会社によってその大きさは異なってくる。
ネット取引、対面・電話取引それぞれの特徴を理解したうえでの対応が重要
手数料を除けば、ネット取引と対面・電話取引の長所と短所は表裏一体だ。あらゆるサービスに当てはまることだが、コストと品質は常に相反関係にある。ネット証券の最大のメリットが手数料の安さであるならば、サービス面では何らかのデメリットがあることは理解しておくべきことだろう。
もっとも現在では多くの情報をネットから得られ、しかも基本的に情報は無料だ。ネットビジネスが有料サービスの提供よりも無料情報に付帯する広告収入を中心に動いていることを考えると、大手証券会社の中枢部門で働く人間と地方在住の個人投資家との情報格差はかなり小さくなったといえる。
ネット証券が手数料と情報格差を縮減したことで、個人投資家(とくに地方在住の)に大きなメリットをもたらしていることは事実だ。一方で、そうした機会を十分に活用するだけの時間や能力を持たない投資家からアドバイスやサポートを求める声も、決して少なくはない。
より適切な証券会社を選ぶためには、様々な証券会社を比較しながら、自分が必要とするサービス内容を様々な見極めることから始めていただきたい。
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