(写真=Thinkstock/Getty Images)
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不動産投資を行う上で、絶対に欠かせないものがある。税務用損益計算書とキャッシュフロー表だ。この2つの表なしに不動産投資を行うのは、海図なく航海する船のようなものだ。また、物件を売却するか、保持し続けるかの判断に重要な役割を果たす。

税務用損益計算書は、個人所有であれば所得税の不動産所得を申告するために必須なものであり、キャッシュフロー表は、購入した物件から最終的にいくら手元に残るのかがわかるようになっている。ここでは、税務用損益計算書の減価償却とキャッシュフロー表の借入金元本の2つに注目していきたい。

1.減価償却で税金をコントロール

一般的に不動産運営の3大経費は、固定資産税・借入金利・減価償却費と言われている。そのなかでも減価償却費が経費に占める割合は物件の差もあるがかなり大きくなる。したがって、減価償却費のコントロールが、税金をコントロールすることになる。

減価償却費とは税法上、建物、付帯設備に耐用年数が設定され、償却できる年数が決められている。カタチのある物の劣化費用のため、不動産投資では建物や付帯設備だけに使え、土地に対しては計上できない。

減価償却の耐用年数は、建物構造別に次のようになっている。

・鉄筋コンクリート(RC)47年
・重量鉄骨34年
・木造22年

税法ではこの耐用年数に応じて償却率が決められている。わかりやすく1億円の新築建物の減価償却費を構造別に計算すると以下のようになる。

・RC:1億円×償却率0.022(耐用年数47年)=減価償却費220万円/年
・重量鉄骨:1億円×償却率0.030(耐用年数34年)=減価償却費300万円/年
・木造:1億円×償却率0.046(耐用年数22年)=減価償却費460万円/年

減価償却費を計上できる期間に注目していただきたい。RCだと220万円の減価償却費を47年間計上できるが、木造だと460万円の減価償却費を22年間しか計上できない。

同じ1億円の建物を、RCは47年、重量鉄骨は34年、木造は22年間かけて経費化していくので、耐用年数が短い建物ほど、年間の減価償却費が増加することで利益が減り、税金の減少に繋がる。最終的に税引き後キャッシュフローは多くなるという仕組みだ。

それでは、建物が新築ではなく中古だったらどうなるのだろうか? 原則、建物の使用可能期間を見積もることによって耐用年数を決める(見積法)。しかし、その建物があと何年使えるかを見積もることは困難なので、税法では中古建物の耐用年数を簡単に算出するための2つの簡便法を認めている。

①築年数が耐用年数を超えている場合
耐用年数=法定耐用年数×20%

【例1】木造の建物(耐用年数22年)で耐用年数を超えている場合
木造の耐用年数22年×20%=4年

②築年数が耐用年数の一部を経過している場合
耐用年数=(耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

【例2】RCの建物(耐用年数47年)で10年経っている場合の耐用年数

37年(RCの耐用年数47年-築年数10年)+2年(築年数10年×20%)=39年

不動産オーナーは、新築物件よりもオーナーチェンジ物件や中古物件を購入するケースの方が多いと思うので、この計算方法は覚えていただきたい。

2.黒字倒産リスク、デッドクロスとは?

通常、借入金で物件購入する場合、その返済方法の多くが元利均等返済となる。その場合、毎月の返済額は元金部分と利息部分に分けられ、借入当初は大部分が利息返済だが徐々に元本部分の返済比率が大きくなってくる。一般的な住宅ローンの場合、元本返済が増えてくることは望ましい。

しかし、不動産投資となると少し様相が異なる。元本返済分は経費にならず、税務上損益計算書上、時間の経過とともに損金経理ができる減価償却費を、損金経理できない借入金元本が上回る現象が発生する。このポイントがデッドクロスと呼ばれる。

つまり、デットクロスとは、
・減価償却費=実際にお金は出ないのに経費にできる
・元金返済 =実際にお金が出るのに経費にできない
その額が逆転した状態なのだ。

そうなると、税務用損益計算書は黒字となり、現金がないにもかかわらず払うべき所得税が大きくなり、黒字倒産ということになってしまう。

これを回避するための主な方法は、次の5つがある。

・繰り上げ返済
・納税資金を積み上げておく
・ローンの借り換えで期間を伸ばす
・新規物件を購入し、減価償却を増やす
・売却

一番危険なのは、将来のことを考えず、今現在、手元にキャッシュが潤沢にあるということだけで、家賃収入だけで生活できると考えてしまうことだ。

減価償却やデッドクロスという守りの知識をしっかり習得することで、キャッシュアウトなしに損金計上できる減価償却を上手にコントロールすることが可能となる。デッドクロスの時期を予測し、前もって対策を立てておくことこそ、出口戦略を見据えた不動産投資戦略になるのだ。

マネーデザイン 代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。

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