AIIBではユーロ圏からの参加国が単独の議決権を行使

AIIBは、アジア、大洋州、中東を「域内」、その他の地域を「域外」と区分し、資本金1000億ドルのうち「域内」が75%を出資する。

それぞれのセグメントの出資比率は、新興国に有利な購買力平価に基づくGDPで決まり、中国が全体のおよそ3割。「域内」の新興大国であるインドが8.4%、ロシアが6.5%で続く。重要事項の決定に75%以上の賛成を必要とするため、中国は事実上の拒否権を有する唯一の国となる。

ユーロ圏からの参加国の出資比率は最大のドイツでも4.5%でインドやロシアを下回るが、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)では、AIIBの開業に先立ち、ユーロ圏から参加する国の代表を一本化し、議決権を行使することで合意している。10カ国合わせることで14.2%となり、拒否権こそ行使できないが、中国に次ぐ勢力となる(図表8)。

日本は米国と共に、AIIBへの創設メンバーとしての参加を見送った。AIIBの運営や透明性や公平性を欠くとして慎重な評価が支配的だ。創設メンバーとしてAIIBへの参加を率先して表明した英国、議決権の一本化という形で影響力の発揮を狙うユーロ参加国が、今後、どのような役割を果たすのか注目されよう。

ECB6

(*1)政策理事会の結果については「16年1月21日政策理事会:3月追加緩和を検討。中銀預金金利引き下げが有力」『経済・金融フラッシュ2016-1-22』をご参照下さい。

伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

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