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Written by 高田泰 125記事

不動産の資産価値にも影響

人口急減の地方都市 「コンパクト化」が住民に突きつけるもの

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

地方の人口減少が急激に進んでいることが、2015年10月に実施された国勢調査の速報値であらためて明らかになった。山間部の過疎地だけでなく、地方都市でも急激な減少に入ったところが多く、このまま進めば都市計画の大幅な見直しが将来、避けられない見通しだ。

政府は都市のコンパクトシティ化を推奨しているが、これは中心市街地に都市機能を集約し、郊外を見捨てることを意味する。地方都市の中が生き残る街と消えていく街に二分されるわけで、住民の暮らしにも大きな影響を与えそうだ。

被災地の人口は沿岸部で大幅減

国勢調査速報値の全国分は2月下旬に総務省から発表される見通しだが、個別に発表された都道府県別の調査結果を見ると、首都圏を除けば人口が増加した自治体はわずか。東北、中部、中四国といった地域では、過去最高の人口減少率となったところが少なくない。

特に人口減が目立ったのは、東日本大震災で被災した福島、宮城、岩手の3県。福島県は原発事故の影響で10万人近くが今も県内外に避難していることもあり、県全体で11万5458人(5.7%)の減。全域が避難区域となる大熊、双葉など4町は人口がゼロとなった。

宮城、岩手の両県では、津波被害の大きかった沿岸部を中心に11市町村が、2010年の前回調査に比べて1割を超す大幅減を記録した。宮城県女川町や岩手県大槌町は2〜4割も少なくなり、存亡の危機に直面している。災害公営住宅の建設が難航するなどしたため、被災者が地元での生活再建を断念したとみられる。

多くの山間過疎地を抱える長野県は、前回調査に比べて5万人以上も人口が減り、1919年の調査開始以来最大の減少幅。減少率は天龍村の17.7%減を筆頭に山間部で目立つが、県都の長野市も3708人減り、地方都市に影響が及んでいる実態が明らかになった。

四国の香川県は17市町のうち、人口増は宇多津町と高松市だけ。香川県統計調査課は「高松市は県外からの転入が多い」としているが、坂出市や丸亀市など都市部が軒並み減少した。日本一人口が少ない鳥取県は、米子市と日吉津村以外の鳥取市など残り17市町で減少した。県人口は57万3628人。県全体の減少率は2.6%で、過去3番目に大きい数字だ。

核家族化や未婚率の上昇により、人口減であっても世帯数は増加していたが、それも間もなくピークを迎え、減少に転じると予想されている。やがて世帯数の減少に陥れば、地方都市の縮小がいっそう加速していくだろう。

迫られる都市のコンパクト化

地方都市はこれまで人口増加を受け、郊外へ発展してきた。その結果、中心市街地の空洞化が各地で生まれている。そうした現状の打開と将来の人口減少を見越し、国土交通省が訴えてきたのがコンパクトシティだ。

市街地の規模を小さく保ち、歩いて行ける範囲を生活圏と考えている。そのため、中心市街地を再開発し、商業施設や住宅を集積、職住近接型の都市計画を進めようとしているわけだ。北海道稚内市、青森県青森市、秋田県秋田市、富山県富山市、愛知県豊橋市などが、具体化に動いている。

これまでは行政主導で身の丈に合わない大型再開発に乗り出すことが多かった。青森市の青森駅東口で2001年に開業した「アウガ」など、売り上げが伸びずに経営危機を迎えた例がある。徳島県徳島市では、中心商店街に市の公共施設を建設する新町西地区再開発が、市の財政規模を超えているなどとして、県や地元商店主の反対を受けて混乱を深めている。

しかし、こうした身の丈に合わない計画は論外としても、都市の縮小に動くのは間違いではない。人口減少が続いて世帯数の減少に入れば、地方都市は否応なく都市計画の見直しと、中心市街地の再開発に乗り出さざるを得なくなるだろう。住民の高齢化に合わせ、公共交通の整備も必要性を増してくる。

不動産の資産価値にも影響

人口、世帯の減少がさらに進めば、地方都市はどうなるのだろう。それを端的に表すのが過疎地域だ。住宅が虫に食われたように空き家へ変わっていく。集落の消滅も虫食い状態で進む。人の姿がそれなりに見えるのは役場がある中心部だけだ。

よく似た状態が一部の都市で既に見られる。長崎県長崎市や広島県尾道市、神奈川県横須賀市などの港町だ。古くからの港町は山が迫った急峻な地形の場所に建設されることが多く、平地が少ない。このため、山の斜面に集落を建設してきた。

その例が横須賀市汐入町の稲荷谷戸地区。集落へ向かうには車が入れずに石段を200段以上も登るしかなく、暮らしに便利とはとてもいえない。その結果、住人の転出が相次ぎ、横須賀市都市計画課は「空き家率が全国平均より高くなってしまった」という。

地方都市だからそれなりに仕事はあっても、生活に不便な場所や交通の便が悪いところから住人が消え、空き家が虫食い状態で増えている。この構図は過疎地と変わらない。

郊外でも交通の便がよく、再開発が進めば、新たな拠点として発展することが考えられる。だが、そうでないところは住民の高齢化、施設の老朽化とともに、見捨てられていく。拠点として生き残る場所と消える街に二分されるわけだ。

これから地方都市でマンションや住宅を購入する場合、消える街を選択してしまえば、資産価値が大きく下がり、そこを売って中心市街地に移ることもままならなくなる可能性がある。

運良く中心市街地に移ったとしても、公共交通が整備されず、商店街が壊滅していたら、生活の不便さは解消されない。人口減少で地方都市の縮小が進めば、住む場所さえ簡単に選べない大変な時代がやってくる。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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