(写真=PIXTA)
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日本人の国民的スポーツといえば、何でしょうか?野球やサッカー、大相撲……と、答えは分かれそうですね。ところで「ご自身で、ずっと楽しんでいるスポーツはありますか」という質問に対して「ゴルフ」と回答なさる方は、中高年層を中心にとても多いのではないでしょうか。

ゴルフは何歳になっても楽しめる競技ですし、社交目的でもおおいに役立ちます。現に、団塊の世代や戦前生まれの世代の間では、ゴルフ会員権を取得している方が少なくない模様です。

こうした背景から、相続時にゴルフ会員権が遺産の一部として残されることがあります。ゴルフ会員権を相続した場合、あるいは相続財産に混ざりそうな場合は早めに対策を講じたほうが得をします。

ゴルフ会員権とは

ゴルフ場はしばしば「会員制」で運営されます。「メンバー料金」と「ビジター料金」が用意されていて、会員権を取得すればビジターよりも格安の料金でプレイを楽しめる、という仕組みです。

したがって、ゴルフ愛好家が相続した場合は、その会員権を使って思う存分プレイを楽しむのもよいでしょう。しかしゴルフに興味を感じる相続人がいないとなると、ゴルフ会員権は無用の長物と化します。特に会費が発生する場合は、何もせずにいると相続人は損をする結果になるわけです。

ゴルフ会員権の価額と相続税額

ゴルフ会員権の価値は、景気等の影響を受けて変動します。とはいえ、価値がゼロになってしまうことはありません。こうした事情から、預託金があるゴルフ会員権は相続税の課税対象にされるのです(相続人が2名以上いるときは、その中の1名だけが相続することになります)。

ゴルフ会員権の価値および税額は、市場での取引相場がある場合とない場合とで分かれます。

1.取引相場がある場合

相続発生時における取引価格の70%が、課税額となります。ただし、その取引価格に含まれない預託金があるときはその金額も加算します。一定期間が経過しないと返還されない預託金については、その期間に応じた基準年利率による複利現価の額を合算します。

2.取引相場がない場合

預託金等の手続きをすれば会員権を取得できるときは、上記1.と同じです。しかし「株主でない限り、会員権を取得できないパターン」があります。この場合は、課税時期の株式の価額を計算する作業が発生します。「財産評価基本通達」の定めにしたがって評価を行います。

さらに、「株主が預託金等の手続きをしないと、会員権を取得できないパターン」もあります。この場合は、株式と預託金等とに分けて評価額を決めることになります。

ゴルフ会員権を相続する道を選ぶなら?

相続することに決めたときは、上述の方法で相続税額を計算して納付します。

※相続の際は、ゴルフ場側から名義の書き換え料金を要求されることが多いです。この点は早めに確認しておくとよいでしょう。

相続後にゴルフ会員権が不要になるなら?

以下のいずれかに該当するときは、被相続人が元気なうちに会員権を売却してもらうことが賢明でしょう。

・被相続人に、もう使わなくなったゴルフ会員権がある場合
・ゴルフをたしなむ相続人が皆無の場合
・相続人の中に、節税にこだわりを持つ方がいる場合

すでに被相続人が亡くなっているなら、相続人が代わって売却を進める必要があります。

ゴルフ会員権の売却にあたって

実は、ゴルフ会員権の売却は簡単だとは限りません。その理由は主に以下の2点です。

1.売った際に手に入る代金に、所得税を課される

会員権を売ると、利益が出たときは、所得税を納める義務が生じます。

※ただし相続の申告期限から3年以内であれば、税の軽減措置を利用できます。これは、会員権のために納付した相続税額の一部を、会員権の取得のために使った費用として扱うというものです。

なお、ゴルフ会員権を売って損失となってしまったときは、現在では給与所得など他の所得と相殺することはできません。

2.買い手がつかないケースが多い

会員権には相場があります。場合によっては、相場が下がったままいっこうに回復する兆しが見えないことがあります。このようなケースとなると、市場に出しても買い手がいっこうに出てこないか、見つかっても極端な安値でしか売れないことがほとんどです。

※この手の会員権については、会員権の仲介会社に手数料と引き換えに買い取りを依頼する、といった対策が考えられます。

ゴルフ会員権が遺産になりそうなときは、損をしない方法を早めに探りましょう

ゴルフ会員権を相続する可能性がある場合は、誰が相続するのか、または誰がどのようにして売却するのかを早めに決めておくに越したことはありません。あるいは、被相続人に連絡して生前に売却してもらうという手もあります。

いずれにしても、最良の対処法はケースバイケースで異なります。ゴルフ会員権が相続財産になりそうなときは、その取扱いを含めた節税対策を検討することが大切です。お問い合わせいただければ、ゴルフ会員権についてもその他の財産についても詳細にご回答させていただきます。

奥田周年(おくだちかとし)税理士。
OAG税理士法人 資産税部部長執筆書籍は、遺産相続と相続税がよくわかる本(日本文芸社:監修)、ずるいぞ!その相続(かんき出版:編著)、Q&A相続実務全書(ぎょうせい刊:共著)等多数。相続税・贈与税の専門税理士でチーム相続を組織し、 メディア を主宰。

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