東京電力

4月30日に東京電力が2014年3月期の業績を発表しました。営業損益1,913億円の黒字(前年同期は2,219億円の赤字)、経常損益は1,014億円の黒字(前年同期は3,269億円の赤字)、最終損益は4,386億円の黒字(前年同期は6,852億円の赤字)となりました。通期での最終黒字は2010年3月期以来4期ぶりであり、東日本大震災後初めてとなります。

コスト削減により会社側の当初予想より営業損益、経常損益ともに数値が改善されていますが、特別損失に原子力損害賠償費として1兆3,956億円計上する一方で、特別損益には特別利益として原子力損害賠償機構資金交付金を1兆6,657億円計上しています。また、固定資産の売却や有価証券の売却で利益を計上しています。営業損益、経常損益、最終損益が黒字となったものの、安心できる内容ではありません。また、2015年3月期の業績予想は未定となっています。電気料金の値上げと徹底的なコスト削減により何とか黒字を確保することができたと言えます。今後、為替相場が更なる円安に向かった時には燃料費の増大も十分に考えられる状況です。

東京電力の業績発表には意外感が感じられません。むしろ、今後、コスト削減の徹底がどこまで効いてくるのか、無理なコスト削減で、組織が疲弊しないかという懸念が生じてきます。なお、業績悪化に苦しんでいるのは東京電力だけではありません。関西電力、九州電力、中部電力、四国電力、北海道電力が赤字となっています。原子力発電所が1基動けば1,000億円の収支が改善されると言われている中、各電力会社は原子力発電所の再稼働、値上げなどを模索しています。

一方、東京電力管内に積極的に進出する動きも見られます。東京電力が積極的な営業攻勢をかけられない中、中部電力は三菱商事と組み、首都圏に攻勢をかけています。また、中国電力もJFEスチール、東京ガスと組み、首都圏への進出を狙っています。さらに商社、石油会社等他業種も虎視眈々と狙っています。2016年以降の電力自由化により電力業界の勢力図は一気に変わる可能性があります。その前段階として今は、電力業界のかつての雄だった東京電力のエリアに他の電力会社や企業が食い込んでいくという新たなステージに入っています。