(写真=PIXTA)
2016年年初来の原油安、世界株下落は中国から始まった。2016年1月4日に発表された中国の12月の非製造業PMIが予想を大きく下回ったことで、中国景気減速懸念が強まった。さらに人民元の対ドルレート切り下げがその懸念を加速させた。上海市場は、サーキットブレーカーが発動し7%安となり取引停止、世界株安のきっかけとなった。
2015年9月の世界株安もきっかけは中国株の急落だった。中国には、米国に次いで世界第2位の時価総額の株式市場が存在する。世界2位でありながら、2015年の上海市場のボラティリティは新興市場を大きく上回っている。なぜ中国のボラティリティは高いのだろうか?
中国経済の注目度が上がっている
中国は人口13億人と世界1位で、経済規模である国内総生産(GDP)では米国に次ぐ世界2位、貿易額では世界1位、世界景気への寄与度をどんどん高めている。
今や、世界の投資家は、中国の経済動向、金融政策から目を離せなくなった。長期の機関投資家にとっては、大きなリターンをとれる可能性が高く重要な分散投資先となっている。また、短期機関投資家にとっても重要な市場だ。
例えば、重要な経済指標などで売り買いを仕掛けるイベントドリブンのヘッジファンドやコンピューターを駆使して商品先物や通貨、株価指数先物など広範な金融商品に投資をするCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)といった比較的短期でトレンドフォローに動くヘッジファンドが、アジア時間でのプレゼンスを高めている。
それが、中国を中心としたアジア市場のボラティリティを上げる結果ともなっている。これは日本市場も一緒だ。
システミックリスク、政策変更リスクが高い
景気がいいときは問題がないが、減速してくるとシステミックリスク、政策変更リスクが強く意識されるため、相場は一方通行でオーバーシュートしやすくなる。米国でハイイールド債が売られるのと同じ原理だ。
システミックリスクとは、特定の市場や金融機関、金融システム等の機能不全が、他の市場、金融機関、または金融システム全体に波及するリスクのことをいう。規制の多い中国市場は、売買できなくなることがあり、システミックリスクが高いと見られている。
中国政府は、為替や資本市場などの金融市場を完全に自由化している訳ではない。人民元はバスケット通貨をベースにした管理フロート制だ。中国人民銀行が、平日9時15分に発表する人民元の対米ドルレートが、投資家の注目を集めるようになっている。
資本流入については、直接投資は認める一方、証券投資は厳しく制限するなど、流動性の高い資金流入は強く規制している。中国株市場は、上海証券取引所、深セン証券取引所の2カ所があるが、他の市場にない特徴として、一つの上場企業が人民元建てA株、外貨建てB株という2種類の株式を流通させている。
A株、B株は株主の権利という点では差ないが、B株は外国人の投資が可能であるのに対し、A株の売買は原則として中国籍の法人・個人に限定されている。2種類ある上、外人が買えるB株の方が高く、構造的には複雑だ。
政策リスクも一種のシステミックリスクであり、ボラティリティを上げる一因だ。中国の市場は政策主導型で、金融政策が証券や銀行の規制にまで深く入り込んでいる。その政策によって市場が大きく変わり売買が規制される可能性がある。2016年の暴落は、政策変更の影響が大きいと言われている。
金融当局は、市場の混乱を防ぐ目的で、主要株価指数が大きく動いた際に取引を停止する「サーキットブレーカー」制度を2016年初から導入した。CSI300指数が5%上昇または下落した場合、サーキットブレーカーが発動され、中国の株すべてが15分間取引を停止する。再開後、7%上昇または下落すれば、その日の取引は停止される。
5%安で一時売買停止の再開後、すぐ7%にまで下落して売買停止になってしまい商いの出来ないリスクは大きい。売りたい投資家は、サーキットブレーカー発動を恐れ、5%手前から投げ売りを始めるので下げ足を早めてしまった。中国政府は、サーキットブレーカー制度の欠点を認識し、現在一時停止している。
大株主の株式売却禁止措置もそうだ。昨年夏の中国株価暴落への対策で、中国証券監督管理委員会(証監会)は、6カ月間の時限措置で株式の5%超を保有する大株主や経営幹部、役員らによる保有株売却の禁止措置を施行した。この禁止措置が、今年1月8日に終わることから、9日以降大株主の売りが殺到するとの思惑が、年初からの中国株の下落を加速させた。
証監会は、急速な需給悪化を避けるための新規定を発表。大株主が市場で保有株を売却する場合、3カ月内に売却できる株式を発行済み株式の1%以内に制限。また、売却の15営業日前までに、計画を開示するよう義務付けた。
このようなシステミックリスクや政策変更リスクに加えて、中国政府の市場対策が説明不足で分かりにくい事も、短期のヘッジファンドなどに投機の機会を提供していると言われている。
中国株は個人投資家のウェイトが高い
資本市場を完全には解放していないため、個人投資家が売買の80%を占めている構造的な問題も、市場のボラティリティ高める一因である。中国では、金融資産に占める株式の割合は、伸びてはいるが、10%程度。不動産約40%、現預金約40%に比べるとまだ低いので、株式に対するリスク志向が高いのだ。
銀行は株式投資のために積極的に個人向けに資金を貸し出したため、株式の信用取引向けの融資残高は2015年6月末時点で2.3兆元(約42兆円)に達した。このリスクマネーが上海総合指数を2015年初から6月高値まで1.5倍以上に押し上げた。市場バリュエーションでみても、これは明らかにバブルだった。
そのリスクマネーが逆回転しはじめたため、信用買い残は9月までで1兆元割れまで約26兆円減少し、株式市場は40%以上下げたのだ。こういった個人の短期資金が主要プレーヤーであるため中国市場はボラティリティが高い。
機関投資家も中国株がベンチマークに入っていないため短期志向
個人のウェイトが高い一方で、海外機関投資家の市場参加は、オンショア市場への投資割当に上限があることや中国株がMSCI等のグローバル株価指数に採用されていないことから制約されている。したがって、安くなったときに市場を支える、長期投資で割り安株投資をするようなバリューインベスターがが少ないのだ。
中国の主役は短期志向のヘッジファンドだった。中国株のヘッジファンドは短期的な大きな下落を防ぐため、ドローダウンで10%下がったときに自動解約する条項がついているものが多いという。そういった中国籍ヘッジファンドが、昨年来の市場推計では1000ファンド以上、運用額は15兆円以上が解約されたようだ。ヘッジファンドの解約が市場の下げを加速したことは言うまでもない。
日本市場への影響も大きい
日本市場への影響も指摘されている。解約された中国株のヘッジファンドは中国株が売れないため、リスクヘッジで、流動性の高い日本株を売った可能性がある。また、イベントドリブンのマクロ系ファンドやCTAも中国市場の混乱を投資チャンスととらえ、リアルタイムで商いできて流動性も高い日本の株価指数先物を売り浴びせた可能性がある。そうして、日本株は、中国株下落の影響を正面から受け止めたのだ。
適切なリスク分散を
上記のように、ボラティリティが高い中国はリスクが非常に高いといえる。これは、1国単位の非常に大きな話のように思えるが、個人の資産形成でも同じことが言える。自らの資産運用は、ボラティリティが高い、すなわち、不確かなものではないだろうか。
もし思い当たるふしがあるのなら、リスクを分散した的確な資産運用をするのがよいだろう。預金だけでなく、もっと広い視野で資産運用をしてみよう。そのためにも、ネット証券に口座を開設してみてはどうだろうか。その際にも、自らに適したネット証券を選ぶことが重要である。今回は以下の2つのネット証券を紹介するので、是非参考にしてみて欲しい。
カブドットコム証券
プレミアム積立(投信)という、毎月500円から積み立てをすることが出来る投資信託サービスを提供している。スマートフォンからでも投資が出来るので、投資経験が少ない株初心者も利用しやすい環境である。投資の知識なども広く公開され、投資情報が得やすいのも魅力の1つ。母体が三菱UFJフィナンシャル・グループであるという点も、「カブドットコム証券」が安心して取引を行うことができる理由の一つとなるだろう。
SBI証券
ネット証券では最多の350万口座を誇る「SBI証券」。最大手という安心感からか、初心者の人気が他のネット証券に比べると高いようだ。取扱商品が多いのも人気の理由である。外国株やIPO銘柄など、それぞれにおいて取扱数は他のネット証券を上回る一方で、ミニ株やPTS(時間外取引)など取扱商品の種類も豊富だ。