注釈

(*1)妻が正社員で、夫がパートタイム労働者または専業主婦の場合も含む。一般的には、夫が正社員で妻がパートであるケースの方が多数であるため、本稿では、夫がある一定以上の収入がある正社員、妻は専業主婦あるいはパートタイム労働者であると仮定し、話を進める。
(*2)所得税では税額控除、住民税では調整控除がある。
(*3)年間の収入が、給与所得のみから得られる場合を想定している。例えば、公的年金受給者の場合、収入金額ごとの公的年金等控除額が異なる。
(*4)所得税であれば、妻の給与収入が年収161万円程度までの場合、給与所得控除65万円と基礎控除の38万円が適用される。
(*5)実際、厚生労働省の調べでも、就労調整を行っているパートタイム労働者の63.0%が「自分の所得税の非課税限度額(103万円)を超えると税金を支払わなければならないから」と回答しており、37.7%が「一定額を超えると配偶者の税制上の配偶者控除が無くなるから」と回答している。
(*6)平成26年度の給与所得者の平均給与は男性514万円となっている。500万円として試算すると課税所得の変動により、税率も変わってしまうため影響変化確認、本稿では550万円をモデルケースとして試算する。
(*7)本稿での「年収」とは「給与収入」のみであるとする。
(*8)配偶者特別控除の適用要件の一つとして、控除を受ける人のその年における合計所得金額が1000万円以下である必要がある。
(*9)厳密には住民税は100万円前後である。
(*10)厳密には、配偶者特別控除が縮小される年収(115万円、120万円、125万円、130万円、135万円の時点)の境目において、逆転現象は若干生じている。本試算の場合、世帯の可処分所得において約1000~3000円程度の逆転現象がみられた。
(*11)妻が夫の扶養である場合、第三号被保険者として自身の保険料支払いは不要。しかし、扶養から外れると妻は第2号被保険者として保険料支払が必要となる。
(*12)また、130万円未満の専業主婦やパートタイム労働者は、夫の扶養となることで基礎年金部分の支払が不要であるにも関わらず、将来基礎年金部分の支払いは受け取ることができる。
(*13)130万円の壁により、目先の可処分所得は大きく減少するものの、夫の扶養から外れることが必ずしもデメリットとなるわけではない。例えば、生涯年収という観点では、妻自身の公的年金支給額は増加するため、妻の働く期間や受給期間によっては、生涯年収が130万円未満時よりも多くなるケースもある。さらに健康保険についても、万一、病気やケガで仕事を休んだ場合、傷病手当金として標準報酬日額の3分の2の支給も受けられる。つまり、妻自身で社会保険に加入する
ことで目先の可処分所得は大幅に減少するが、将来を含めた生涯の可処分所得は増えるケースもある。
(*14)人事院「民間給与の実態(平成27年度職種別民間給与実態調査の結果)」より抜粋。
(*15)民間企業における配偶者手当(家族手当)の支給状況(平成27年)は、扶養家族が配偶者のみ場合、13,885円。配偶者と子1人の場合、19,893円、配偶者と子2人の場合、25,418円。出所は厚生労働省「第1回女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」資料の『配偶者手当を取り巻く現状』より。
(*16)国家公務員に支給される各種手当のうち,「扶養手当」の配偶者への支給の要件は、年収130万円となっている。
(*17)方向性①の派生案として、配偶者控除の適用に所得制限を設ける案。
(*18)方向性②の派生案として、いわゆる移転的基礎控除の導入・税額控除化案。
(*19)現在の児童手当制度において所得制限が設けられていることから、新たな子育て給付措置にも同水準の所得制限が設けられる可能性は高いため。そもそも、合計所得が1,000万円を超えている場合(給与の年収でいうと、約1230万円を超えている場合、配偶者特別控除は適用できない。そのため試算は夫年収の1200万円までとしている。
(*20)夫の年収の違いによる負担の変化は、2章1-ⅱの試算を参照。

薮内哲
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

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