(参考)「いわゆる移転的基礎控除の導入」で影響が出る世帯は?

ⅰ)二重の控除と移転的基礎控除

配偶者控除に就労調整の原因となっている問題とは別に税の公平性という観点からも「二重の控除」という問題点が指摘されている。「二重の控除」とは、ある夫婦世帯で妻年収が65万円超141万円未満の場合、それ以外の世帯と比べると控除適用額が最大で38万円多く適用されることである(図表17)。

配偶者控除見直し17

具体的には、妻は年収が65万円以下であれば、妻が受ける控除は給与所得控除のみであるが、年収が65万円超141万円未満の場合、妻は給与所得控除の65万円分に加えて基礎控除が適用される。一方で、夫側にも103万円までは配偶者控除、141万円までは配偶者特別控除が適用されているから妻年収が65万円超141万円未満の層だけ二重に控除を受けていることになる。

一般的な世帯類型で考えれば、妻年収が65万円超141万円未満に当てはまる世帯は夫が正社員、妻がパート社員である場合が想定される。配偶者控除は、夫正社員で妻パート社員(妻年収が65万円超141万円未満)を妻年収65万円以下に該当する専業主婦世帯や妻年収141万円以上に該当する夫婦共に正社員で共働き世帯よりも、手厚く優遇しているということなる。

そこで、夫婦2人で受けられる控除の合計額が妻年収の左右されない(つまりは世帯類型と違いに左右されない)、いわゆる移転的基礎控除導入が案として挙げられている。夫婦の合計控除額について妻の年収に左右されないということは、女性の就労調整の要因ともならないことから今回の配偶者控除見直しの目的とも合致する。

ⅱ)移転的基礎控除の導入における影響・妻の年収別

政府税調資料に示されている移転的基礎控除について、導入による家計への影響を確認しよう(図表18)。

配偶者控除見直し18

二重の控除の恩恵を受けられなくなること妻年収65万円超141万円未満である世帯が負担増となる。妻の基礎控除と夫の配偶者控除が全額活用できていた妻年収103万円の世帯の負担増額が最も大きくなる。これは夫の年収550万円のケースで、配偶者控除がなくなることでの負担増は7.2万円と同額であり、夫の年収により異なる(*20)。

子育て支援策について考慮すると、妻年収にも左右されるが、妻年収103万円前後である妻パートタイム労働者かつ子育て世帯であれば低所得層は世帯の可処分所得が増加し、高所得層は減少する。その一方で、世帯年収に関係なく片働き・専業主婦の子育て世帯にまで恩恵が及ぶ。