(写真=PIXTA)
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はじめに

現在、政府は所得税改革に向けた総点検に着手しており、とりわけ人口減少下における労働力確保や女性活躍推進の観点から、配偶者控除の見直しを検討している。

配偶者控除は、夫が正社員で妻がパートタイム労働者または専業主婦である世帯(*1)において「103万円の壁」として、既婚女性の働く時間を調整する(=一定時間以上働かない)原因になっていると指摘されている。

既婚女性の30歳~59歳の年代別の収入分布を確認すると年収100万円付近に集中している。年収100万円付近の既婚女性の一部は、「今以上働きたくないから働いていない」のではなく、「それ以上働くと損をするから」という理由で働く時間を増やしていない。

日本は少子化を背景にした人口減少や人手不足に直面しており、少しでも多くの労働力を確保する必要がある。制度が労働参加を妨げているのであれば、見直すべきであろう。

配偶者控除見直し1

とりわけ配偶者控除に注目が集まっているが、働く時間を調整(就労調整)する原因となっている壁は他にもある。「社会保険料支払いが必要となる130万円の壁」と「企業の配偶者手当による103万円の壁」である。

本稿では、最初に配偶者控除を中心に就労調整の原因となっている3つの壁について概観し、その後、現在政府内で示されている配偶者控除の見直し案を元に、家計の可処分所得に与える影響について展望する。