(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

来日する中国人は何も観光客ばかりではなく、留学や労働目的の来日件数も一昔前と比べて格段に増えた。日本のビジネスパーソンが中国人部下を持つ機会も格段に増えている。異なる文化的背景を持つ部下を持ったときに心掛けるべきことをここで考えてみよう。

メンタリティをまずは理解する

日本と中国との間のビジネス上のつながりは年々拡大しており、中国企業との商談はもちろん、中国人と一緒に働く機会は今後もますます増えるだろう。商談については優秀な通訳やコーディネーターを立てることで対処可能だが、問題は中国人部下への対応だ。日本とまったく異なる文化的背景を持つ中国人部下をどう管理すればいいのか。その管理術は、これからの多文化共生時代に必須のビジネスセンスといえる。

日本人と中国人の違いを語るときによく言われるのは、日本人は「集団主義」であるのに対し、中国人は「個人主義」という点だ。具体的には、日本人は会社への帰属意識が強く、急な残業なども素直に受け入れるが、中国人はその逆に会社への帰属意識が薄く、会社の都合よりも個人の都合を優先させるため、上司から命じられた急な残業などには素直に応じない傾向がある。

中国では「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)の慣習はないという点にも留意したい。「ほうれんそう」がないということは、部下が現場において独断で重要な決定を下すことがあるわけで、逐一上司に確認を取った上で物事を決定する日本の企業文化とは大きく異なる。

中国ではどのようにして部下の独断を止めるかというと、上司が部下のもとへ足を運んで状況を聞きだし、指示を出すのが一般的だ。言い換えれば、部下が独断で動かないように常時監視する必要があるということになる。

以上のような中国人独自のメンタリティを理解することなしに、中国人部下をうまく管理することはできないと肝に銘じておこう。

中国人部下は「ほめて伸ばす」方針で

次に中国人部下の「ほめ方」と「叱り方」というポイントで管理術を考えてみよう。まず、ほめ方については以下の3つのポイントを心掛ける。「きちんと言葉にしてほめる」「なるべく人前でほめる」「奨励金などをうまく活用する」--の3つだ。

◎きちんと言葉にしてほめる
基本的に中国人は他人のことも自分のこともほめちぎる民族性なので、よい仕事をしたときは言葉できちんとほめたほうがいい。また普段から、よいところを見つけてほめることでモチベーションが上がる。人をほめるのが苦手な人もいると思うが、中国人部下は「ほめて伸びる」タイプだと割り切り、ほめる努力を。

ただし、異性の部下に対しては容姿をほめてはいけない。日本でもセクハラ扱いされることが多いが、中国ではもっと明確に「相手を性的対象として見ている」と解釈されてしまうからだ。

◎なるべく人前でほめる
中国人は面子を重んじるため、なるべく人前でほめることで本人も喜び、自信につながる。

◎奨励金などをうまく活用する
中国人は実利的でもあるため、言葉でほめるだけでなく奨励金などを設定して、よい仕事をしたときは金一封をわたすなどの工夫があると仕事に邁進してくれるようになる。

叱るときには「メンツ」をつぶさないように

中国人はメンツをつぶされることを非常に嫌うといわれ、たとえば、対等な関係の者同士が会食した際には代金を我先に支払おうとして争いになることもある。「相手に支払われると自分の面子が立たない」という考え方なのだ。

そこで、中国人部下を叱るときにも面子にかんするそのような文化を考慮する必要がある。具体的には以下の3つのポイントを心掛けるといいだろう。

◎人前では叱らない
取引先やほかの社員の前、あるいは会社とは無関係の人の前でも、とにかくほかの人のいるところで叱ってはいけない。人前で叱られた中国人部下が翌日から会社へ来なくなったというケースは少なくないという。叱るときは別室へ呼び出し、2人きりで叱るよう心掛けよう。

◎「第三者の声」を利用する
「ほかの社員から君の悪い評判が伝わってくるよ」と忠告する形で叱るのも1つの方法だ。面子を気にする彼らにはこれが一番こたえるともいわれる。これによりショックを与えた上で、「こうすれば評判も回復する」とフォローすれば、いい形でその部下の行動を改善できるだろう。

◎必ず直属の上司が叱る
中国人は自分の給料査定に直結する上司には従おうとするが、直接関係しない部署の上役の指示に対してはあいまいな態度をとる傾向がある。そこで、叱る必要がある時には直属の上司がその役を果たしたほうがいい。

おざなりな謝罪に見えてもそうではない

ここまで読んできて、「なぜそこまでして相手に合わせなければならないのか」と思う人もいるだろう。しかし不満を言うのではなく、日本と中国の文化の違いと割り切って合わせるべきところは合わせたほうが、互いにとって良い関係を構築できるはずだ。

最後に付け加えておくと、中国人部下が謝罪の言葉を口にしたときには、それがおざなりな態度や不満気な態度に見えたとしても、心から謝罪しているのだと考えていい。メンツを重んじる彼らにとっては、言葉による謝罪はそれだけで十分な謝意の表れなのだ。(ZUU online編集部)