事業承継①

高齢化社会の影響が経営者にも波及しています。2014年版の「中小企業白書」によると事業を悲観し、誰にも相談せずに廃業を考えるケースも増えているとのことです。1982年ごろには30代~40代の自営業主が多くを占めていましたが、これらの自営業主がそのまま年齢を重ね、事業承継できずに、もしくはせずに経営を行っているという見方ができます。

若い自営業者が一向に増えないという点も影響しています。「まだ自分が動けるから」と問題を先送りにしている面もありそうです。中堅・中小企業のM&Aを専門に行う日本M&Aセンターでは、M&Aの成約件数が年々増えており、業績も好調です。これは裏を返せばそれだけのニーズがあるということになります。また、2013年版の中小企業白書によると事業承継の時期として「ちょうど良い時期だった」と回答した割合が最も大きな年代は40代(40歳から49歳)であり、73.3%に達します。そして、この割合は年代が上がるごとに小さくなり、60歳以上では50.6%になり、一方で「もっと早い時期の方が良かった」との回答の割合が42.6%と増えており、事業承継のタイミングが遅れがちであることを示唆しています。

会社を経営を続けているうえでいずれやってくる問題が事業承継です。ただ、「頭ではわかっているけれども、なかなか行動に移せない」といったところが現実だと思います。事業承継をいざ考えようとすると、後継者の選定や育成、保有株の譲渡、株価対策など様々な準備が必要となります。そして、このような問題は簡単に片付くものではありません。

一方で、営業は日々行われます。そのため、事業承継という少し先の話が後回しになってしまうのです。事業承継は数年の計画を立てて行うものですし、そして一人ではどうしようもありません。なぜなら、税務や法務、会計など専門的な分野が多すぎるからです。

このような状況の中で経営者がとるべき行動は「どのように事業承継をするか」という前に「だれに相談することがベストか」ということでしょう。つまり、優秀なパートナーを見つけることが先決です。事業承継は大きなビジネスにもなっており、最近では金融機関や会計事務所もコンサルティング業務に力を入れています。事業承継はすぐにできるものではないので、まずは経営者が自分の時間の数%でも事業承継について意識しておくことが大切なのではないでしょうか。