やる気,モチベーション,IKEA
(写真=PIXTA)

IKEAで家具を買ったことがある方なら感じたことがあるだろうが、意外に組み立ては面倒だ。しかし安さもあってか、面倒なのにもかかわらず、リピーターになる人が多いという。

実験でIKEAが把握した消費者心理

実はIKEAが行った実験で、家具のプロが仕上げた既製の家具と、自分で組み立てた家具の両方にいくらの値を付けるかという問いに対して、自分が手掛けた家具の方に高値を付けたという。既製品がどんなに美しく高級感のあるものであってもだ。

この実験の結果を受けて、IKEAは家具商品のほとんどを「消費者が家庭で組み立てる」という施策を取ることにしたようだ。

ハーバード大学のマイケル・ノートン博士は「人間は自分が手間暇をかけることが品質の向上に繋がると信じるもの」と言う。家具の話に限らず、盆栽でも料理でも、自動車や陶芸品でも同じことだろう。たとえ不格好であっても自分で手を掛けるものに対する思い入れにも共通する。

作るのが簡単過ぎた「ケーキミックス」

ケーキミックスのマーケティング手法で同じような例がある。発売された当初のその「ケーキづくりの粉」は、水だけ入れて、混ぜて焼くだけという「簡単さ」を売りにして発売された。時間も省ける、味も問題ないが、まったく売れなかったという。

“ウリ”だったはずのその「簡単な」ケーキミックスには、主婦たちの本来の楽しみでもあるケーキ作りの「手間暇」「試行錯誤の努力」を奪っていたのだ。

そこでメーカーは、ケーキミックスに含まれた成分の中から、卵、牛乳の成分を抜き、購入後、ケーキを作る際にそれらの追加が必要な商品として売り出した。すると大当たり。売り上げは上昇の一途をたどった。

イタリア、ボッコーニ大学の准教授マーティン・シュライヤー氏は、この「IKEA効果」は職場での労働、作業にも活用できることを指摘している。

例えばプレゼン資料を作成したり、プロジェクトの施策・戦略を提示したりするまでには、多大な時間と労力を要する。業務を任され、調査、聴き取り、分析、資料作成など様々な準備が必要だ。難しく、大変なものであればあるほど、その過程でさらにアイデアを絞り出し、より良い発信や施策となるよう工夫を施し、創造性を発揮すると考えられる。手間暇を掛けた成果ほど愛着が湧く。義務感より自発的な意欲も生まれやすい。

アイデアを絞る、工夫をする、自分で考える、自分の手間暇をかける……。これらは人間にとって「楽しみ」「充実感」でもあるのだ。IKEA効果と重なる部分に気付いてもらえるだろう。

あなたが上司ならば、部下の意欲を上げるために必要なことが何なのか考えるヒントになるだろう。「楽だから楽しい」となる訳ではない。「楽ではないからこそ、楽しい」と感じられることもあるのは、ビジネスにおいても同じだ。そうした心理作用をマネジメントに生かさない手はない。(ZUU online 編集部)