イ・ボミ

彼女の存在が日本女子ゴルフ界を熱くする

今年も国内女子ツアーの人気は衰える気配は無い。

昨年37試合だった国内女子ツアーは、今年2016年、1試合増の合計38試合が開催される。国内男子ツアーは1試合増の26試合(海外開催の2戦を含む)と、人気の差は歴然だ。この現在の女子ツアー人気に拍車をかけているのが、2015年賞金女王、イ・ボミの存在だ。

ボミは2015年、年間7勝を挙げ悲願の賞金女王に輝いた。獲得した賞金は2億3049万7057円、この額は、男子国内ツアーで伊沢利光プロが2001年に獲得した2億1793万4583円を上回り、男女通じて国内ツアー史上最高額となり、名実共に日本のゴルフ界を代表するトッププロとなった。

韓国水原市出身・27歳のボミは、2008年に韓国女子ツアーでプロとしての第一歩を踏み出した。プロ3年目の2010年には同ツアーの賞金女王に輝き、翌2011年から日本ツアーに主戦場を移した。

日本ツアーでの初優勝は、参戦2年目の2012年、『ヨコハマタイヤゴルフトーナメントPRGRカップ』。その後も毎年安定した成績を挙げてはいたが、賞金女王にはあと一歩手が届かないでいた。2014年には夏場までに3勝を挙げ賞金ランキングの首位に立ったものの、ツアー終盤に勝利を挙げることができず、逆転で女王の座を逃してしまった。

そして迎えたツアー5年目の2015年。開幕から確実に勝利を積み重ね、やっと手にした賞金女王の座。そこには2014年9月に亡くなった父の願いを叶えたいという、彼女の強い想いが込められていた。

ゴルフ界を席巻する韓国勢、その強さの秘密

ボミがゴルフを始めたのは12歳のとき。幼いころからゴルフの英才教育を施す韓国では、12歳でのキャリアスタートは決して早いとは言えない。彼女の故郷は韓国の東北部の田舎町で、決してゴルフ環境に恵まれているわけではなく、また彼女の家庭も決して裕福とは言えなかったからだ。それでも父親の強い勧めでゴルフを始めたボミは、周囲に追いつくために絶え間ない努力を続けたと聞く。

韓国では子供をプロゴルファーに育てるために、家族が全面的にサポートするケースが多い。学校の授業よりもゴルフの練習が重視され、国内の有名アカデミーに通わせる。アメリカやオーストラリアなどのゴルフ環境の優れた地に家族ごと移住する例も珍しくないという。

彼らがまず目標とするのがナショナルチームに入ることだ。ナショナルチームは男女それぞれ6名で、その下に常備軍と呼ばれる選手たちが男女30名ずつ。非常に狭き門だが、ナショナルチームに選ばれると、練習費だけでなく、試合の遠征費も国が補助してくれるシステムになっている。

ハード面では、韓国のゴルフ場の数は約250コースで、日本のわずか10分の1に過ぎない。この数字だけを見るとゴルフ環境に恵まれていないように思われる。しかし昨年プレジデンツカップ(米国選抜と世界選抜による2年に1度の対抗戦)が開催されたジャック・ニクラウスゴルフクラブ(韓国・仁川)を見て、そのコースの美しさに韓国のゴルフ場に抱いていたイメージが大きく変わった人も多かったのではないだろうか。

また仁川にある世界最大のゴルフ練習場・ドリームゴルフ練習場は、総面積はなんと26万9468平方メートル。これは東京ドームの約5.8倍の広さだ。その中に円型に打席が配置されており、各レンジから中心に向かって打つ。円の中心までは約250ヤードというスケールの大きさは日本では考えられない。また、施設内にはゴルフアカデミーが複数入っており、スクール同士の競争も激しく行われている。

このようにプロゴルファーを育成する環境が揃った韓国ゴルフ界において、決して恵まれた環境とは言えなかったイ・ボミが成功を収めたことは、韓国ゴルフ界にとって新しい扉を開いたと言っても過言ではない。

イ・ボミを支える日本の匠

山形県酒田市日和山公園
(写真=PIXTA) 山形県酒田市日和山公園

現在イ・ボミが常に笑顔で安心してプレーできるのは、彼女を支える日本の匠たちの存在も大きい。

その一番手といえるのが本間ゴルフであろう。ボミは2013年から、ゴルファーにとって最も重要ともいえるクラブを本間ゴルフと契約、本間ゴルフといえば、山形県の酒田市を本拠地とする老舗ゴルフクラブメーカーで、ボミも毎年オフになるとクラブフィッティングのため酒田工場を訪れ、細かいオーダーを伝え、翌シーズンを戦う準備を整える。

シーズン中も、本間ゴルフのサポートは万全だ。急なオーダーにも対応できるようツアー会場にツアーバンを投入、おなじく本間ゴルフと契約する谷原秀人プロは、「朝伝えたオーダーを3時間くらいで形にしてくれる。そんなクラブメーカーは他には無い」とそのサポート力に絶大なる信頼を寄せるほどだ。

コース内では、豊富な経験と実績を持つ清水重憲キャディがボミを支える。清水氏は、2007年に男子ツアーで谷口徹、女子ツアーで上田桃子のキャディとして、男女共に賞金王&賞金女王に導いた実績を持つ。2014年からイ・ボミのバッグを担ぎ、試合だけでなく、オフのトレーニングにも同行するなど、彼の長年の経験と実績から導き出される確かな目は、彼女の圧倒的なパフォーマンスを支えている。

そんな日本の匠たちが、彼女が持つ力を最大限に引き出す存在であることは間違いない。果たして今年は何回、優勝カップを持った愛らしい笑顔を見ることができるのだろうか。楽しみにしたい。(提供: Vortex online

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