インターネットを利用した空き家仲介サービスとして、近年爆発的にシェアを獲得しているAirbnb。すでに世界190か国以上でAirbnbに物件が登録されています。また、日本では2015年時点で1万3,000件以上の登録があり、宿泊者の大半が外国旅行客ですが、その数は100万人を突破しています。
日本国内ではAirbnbに対する法整備が整わないまま、物件数、利用者数ともに急増しています。しかしすでに海外では、Airbnbの利用を規制する国が現れました。そこで今回は、日本政府がAirbnbの広がりを後押ししてゆくのか、それとも規制に動くのか、その動向についてご説明しましょう。
世界中の旅行者に利用されるAirbnb
Airbnbは2008年にアメリカのサンフランシスコで創業された、世界最大手のインターネット空き家仲介プラットフォームです。パソコンやスマートフォンから簡単に予約できる上に、ホテルや旅館などと違って自分の家のように気軽に使える事や、格安の庭付き一戸建てがあったり豪華設備付きタワーマンションの部屋があったりと選択肢が多い事、大人数で泊まると安くなる物件がある事など、様々な魅力から世界中の旅行好きの人々の間で当たり前のように使われるツールの一つになっています。
日本国内のAirbnbの広がりには目覚ましいものがあります。2014年にサービスがスタートし、現在は47都道府県で物件が登録されています。Airbnb本社の調査結果によると、Airbnb導入による日本国内での経済効果は年間2,219億円と発表しました。また、Airbnb発表の「2016年に訪れておくべき地域」ランキングでは、タイのバンコクやマレーシアのクアラルンプールを抑え、日本の大阪が圧倒的人気で1位に選ばれました。Airbnbを利用する旅行者から、日本が注目されていることがうかがえます。
今年中に規制緩和方針を発表
日本を訪れる外国人観光客の急増やそれに伴う宿泊施設不足、2020年に開催される東京オリンピックを受けて、2015年日本政府はAirbnbなどの「民泊」の規制緩和に関する議論をスタートさせました。
Airbnbを利用して「民泊」を提供する日本国内の物件は、本来、旅館業法上に基づく届出が必要とされていますが、これまでのところ無許可で営業されています。また、民泊による経済効果は約10兆円になると言われており、政府のスタンスを見る限り「規制を厳しくし過ぎてこの好機を逃したくない」という考えのようです。
現在、関係各省庁や有識者会議の場で客室面積基準の緩和や、営業を許可制にするのか届出制にするのかなど様々な議論が行われています。政府関係者や関係省庁間には意見の相違もありますが、2016年までに日本政府は個人の民泊が合法的に営業されることを目標に掲げており、今年中に正式な方針が発表される予定です。
今の段階ではまだ旅館業法の法改正などは行われていないため、旅館業法の規制を受けない国家戦略特区である東京の大田区と大阪で、宿泊施設不足解消などを目的に、民泊条例が適用制定されました。
2016年2月から正式に民泊の運営が可能となった大田区では、東京都千代田区のとまれる株式会社が運営する国内の宿泊仲介サイト「STAY JAPAN」(https://stayjapan.com/?locale=ja)で、JR蒲田駅周辺にある2件の物件が、2016年2月12日に初めて民泊営業の許可を受け掲載されました。
一方、大阪府では2015年10月、大阪市で2016年1月にそれぞれ民泊条例案が可決されました。大阪府では2016年4月から条例が施行される予定ですが、大阪市では周辺住民とのトラブルや安全面などへの配慮からを懸念しており、条例の施行日は7月以降に予定されています。
各国でのAirbnbに関する規制は
日本で民泊の規制緩和が進む一方、日本よりも先にAirbnbのサービスが提供されている海外では、Airbnbによって起こり得るトラブルを懸念し、様々な規制を設けている国や地域が少なくありません。いったいどのような規制がなされているのでしょうか。
Airbnb発祥の地でもあるアメリカでは、日本と同じく全土に登録物件があり、ホスト(民泊の提供者)数も一番多い国ですが、現在は州ごとに規制が設けられており、その度合いは地域によってかなり差があります。
例えばカリフォルニア州のサンタモニカでは、Airbnbのホストは利用者の宿泊期間中、宿泊施設に滞在することが義務付けられており、「空き部屋を貸し出す」というビジネスモデルが成り立たなくなっています。さらに、14%もの宿泊税を支払うこと、Airbnbの運営に関するビジネスライセンスを取得することも必要とされています。アメリカではホテル業界とAirbnbが完全にライバル関係になっているということが、その背景にあります。
同じカリフォルニア州のサンノゼでは、ホストが市外への旅行・出張などで不在にする場合には、連絡先を登録する必要があり、かつ運営は年間180日以内というルールがあります。
アメリカと同じくAirbnbの登録物件が多いヨーロッパは国によって規制が様々で、基本的には自治体ごとに規制が行われています。
例えば、イギリスのロンドンでは、年間90日以内のAirbnb利用であれば、自治体への申請が免除されています。また、3万人のホストがいるフランスのパリでは、年間120日以上のAirbnb利用が禁止されています。
オランダのアムステルダムでは、Airbnbの利用は年間60日間以内で、1軒当たり4名以上の宿泊は禁止という規制があり、これを守らないホストは登録物件を削除するという取り決めがアムステルダムとAirbnbとの間で交わされています。
実際、2016年の1月には、規制を守らなかったとされるホストの170物件が、Airbnbのサイト上から削除されたそうです。
まとめ
上記のように世界各国ですでに様々な規制が実施されているAirbnbですが、言いかえればそれだけのニーズがあるとも言えます。
日本では一部のマンションにおいて、管理規約による民泊禁止という動きもあります。今年、来日外国人観光客の数は2,000万人を突破することが確実と言われています。その一方で、首都圏では宿泊施設の不足が深刻化しており、そうした状況から、Airbnbがさらなる進展を見せることは間違いないと思われます。
また、不動産オーナーにとっても、所有する部屋をAirbnbとして利用することは、投資物件の新たな活用方法として期待できます。Airbnbの宿泊料金の相場は、家賃の約1割と言われており、うまく運営すれば通常の賃貸よりも多くの収入が期待できます。そうしたニーズはますます高まってゆくでしょう。(提供: Houstock Online )
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