安倍政権が掲げる「成長戦略(日本再興戦略)」。その中で「人材の流動化」も雇用や人材戦略に関する施策のひとつとして取り上げられています。また、転職・派遣サービスなどを行う人材サービス業界も近年活況を呈しています。果たして人材の流動化により経済成長は実現するのか。転職に向けた適職発見の観点から、最近の事情をまとめてみました。

人材の流動化に向けて、政府もこれまでの方針を一変

change
(写真=PIXTA)

長引く不況のなか、政府はこれまで失業者の増大を防ぐために社員を企業内に留める「雇用調整助成金」を主な施策としてきました。しかしこの制度は、リストラを減らす一定の効果はありましたが、逆に人材を企業に留め社内失業者を生み、人材の流動化を妨げる側面もあったのではないかといわれています(労働政策研究・研修機構:報告書No.187より)。そこで政府は、近年これまでの方針を一変させ、非正規の雇用・育成を積極的に支援する「キャリアアップ助成金」の増額へ踏み切りました。

また、政府が戦略市場創造プランの中で示している、健康・医療、エネルギー、次世代インフラ、地域資源ブランド(農業、食糧関連産業および訪日外国人向け観光)といった成長分野での雇用機会が増えれば、所得者数が増加、消費活動も活発化し、経済の好循環が期待できるでしょう。その成長分野への人材流入を誘導するのが、人材サービス業界です。

マッチングのためのさまざまな工夫やテクノロジーを駆使

人が新しい分野への転職をためらう理由のひとつに、自分の経歴や経験が新しい分野で活かせるかどうかわからない、という問題があります。そこで重要になるのが、本人のスキルや希望と新しい仕事とのマッチングです。

転職への入り口として、ハローワークや人材紹介会社、ヘッドハンティングなどがありますが、そのなかでも人材紹介会社が多くの人にとって身近かもしれません。

最近の人材紹介会社は、各々の特徴に磨きをかけています。たとえばWEB、IT系企業や製造業、サービス業など業種別にも力を入れており、管理職や営業職、事務職、接客など、職種も幅広く網羅するなど、幅広く受け皿を用意しています。また化学者やエンジニア、マネジメント人材、クリエイター、ドクターなどのプロフェッショナル職を専門とするなど、業界・業種、職域・仕事の内容別に多様な人材紹介会社も存在します。

また最近では、SNSを活用して転職活動を支援するソーシャルリクルーティングや、人工知能とビッグデータを組み合わせた適職診断、チャット相談など、会社と仕事をマッチングさせるための多様なサービスが提供されています。

テクノロジーの進化や国・自治体によるベンチャー支援なども背景に、従来は容易ではなかった転職活動を可能にするサービスが続々登場しています。利用する側にとっては、より希望に合った会社や仕事を見つけられる環境が整ってきたといえるでしょう。

今後求められるのは、よりきめ細かい配慮とサービスの充実化

政府による後押しもあり、日本経済を支える成長分野における産業で新しい企業や新しい職種は増えることでしょう。人材市場の活況化とともに、官民あげての人材流動化は一層進むと予想されます。

現在、拡大中の人材サービス業界ではありますが、利用者にとっては玉石混交でもあるのも事実です。転職は人生の中でも重大なイベントであることからも、人材サービス業界にはきめ細やかな配慮とサービスの充実が今後もより一層求められるでしょう。

利用者としても、インターネット上の膨大な情報に溺れることなく、検討している企業や業界の成長性や安定性、自分の適性をしっかりと吟味・熟慮することをおすすめします。 (提供: お金のキャンパス

【関連記事 お金のキャンパス】
東京五輪の経済効果は?その後の落ち込みはどうなる?
転職前に気を付けておきたい税金・年金・お金の話
知っていますか? 「年金」の種類と仕組み
お金のことが学べる映画5選
2020年に向けて市場規模が急拡大 「VR」「AR」で世界はどう変わる?