中国人富裕層はメディアへの露出を嫌う。これは、中国人だけに限った話ではないが、その理由をファミリーオフィスの運営者に聞くと共通した回答が得られた。
第一の理由は、各金融機関のファンドセールスをはじめ、慈善団体、事業投資など様々な資金調達のための売り込みにあるとのことだ。一度資金を献金すると、どこからかその話を聞きつけ、様々なセールスがやってくるのだ。その他の理由は、身代金目当ての誘拐などの危険リスクを低くすることや、富裕層社会での噂話の対象になるのを避けることが挙げられている。
「自分の寄付した資金に責任を持つ」
ファミリーオフィスが管理する一族の資産の中ではほぼ全てと言っていいほど、チャリティー団体への寄付や、ファミリー信託ファンドを設立し、そこから教育や健康面など社会的貢献を目的とした分野に資金を注入している。
公式に政府に登録されている慈善団体、非利益団体などへの献金は税金控除の対象となるという以外にも、富裕層たちの一部の後継者たちは家族が得た資産の社会的還元を願い積極的に寄付活動を行っている。中国本土は香港の富裕層に比べると社会的貢献度は低いが、次世代の富裕層たちは意義ある資産の利用方法を海外留学などから学び、意欲的に実行に移している。
しかしながら、そんな善意を利用した営利目的のチャリティーを名乗る団体も多くあることから、ファミリーオフィスは計画なく献金はしないという。実際に多額の資金を中国のチャリティー団体に寄付し、その後団体の消息がつかめなくなったケースが多々あると、あるファミリーオフィスの創設者は語っている。「金持ちはケチといわれるが、善意につけ込んで金を騙し取られるケースが横行しているため、しっかりした調査やデューデリジェンスを行わない限り、投資も含め献金は行わない。自分の寄付した資金に責任を持つということを持たなければならない」とのことだ。