誘拐リスクにさらされる富裕層

中国では莫大な身代金目当てに富裕層家族の一員を誘拐する事件が横行しているため、極力メディアに個人の顔写真や情報が露出しないように防御線を張っている。たとえ、メディアのインタビューに答えたとしても、匿名でのコメントが多いのが事実である。

誘拐事件は犠牲者やその家族が公にしない限りなかなかニュースにはならないが、中国の貧富の差が激しくなっている今、富裕層の誘拐事件が年々増加している。

中国国家統計局によれば、全国の公安機関による児童及び婦女の誘拐・人身売買事案の立件数については、2013年は前年比より2203件増加した2万735件で誘拐の主な対象に中国人の富裕層が挙げられている。しかし、これはあくまで通報された数であり、実際に富裕層は誘拐があったとしても公にはせずに個人で解決していることもある。なぜなら、メディアにさらされ、次なる誘拐リスクを最小限に防ぐためである。

フォーブズ誌で昨年の世界富豪ランキングで20位の香港の長江集団の創始者である李嘉誠(り かしん)は長男が1996年に誘拐されたのち約10年近く経ったのちに当時の事件をメディアに身代金20億香港ドルを要求されたと話している。

しかし、その一方で、20代、30代前半の「富二代」と呼ばれる中国富裕層の子供達は自己資産、例えば高級スポーツカー、高級貴金属や時計、さらには手元にある人民元の札束などの画像をSNSで一般に公開して社会的な富裕層批判を買っている。

財を築いた富裕層の両親たちの思いとは裏腹な行動をとる子供達は、個人情報を暴露して社会からの反感を自ら扇動し一族全体を社会的リスクに晒してしまっている。

このような富二代の態度に、政府までもが乗り出し、富裕層の子供達に金銭感覚を養わせるための教育を強化するとまで言っている。それほどに深刻な状況ということだろう。

自らの認識と知識を資産運用に反映させる時代に

自分たちのネットワークを富豪クラス内で築き上げる富裕層。投資や資産運用などや継承問題の情報を交換し、極力金融機関などのサービスプロバーダーからではなく色々な人からの経験談を聞き、自分たちで賢い資産運用をするように勤めている。これらの集まりは内密に行われ、たとえ富裕層をターゲットとした投資勉強会なども開催されているがメディアは一切遮断されることが富裕層の参加条件の一つになっている。

ベールに隠される富裕層たちの私生活。富裕層たちは社会的問題から資産運用まで様々な場で情報を得ながら、一族のファミリーマネーをただ単にファンドマネジャーに任せていた時代から自らの認識と知識を資産運用に反映させる時代に移りつつある。(香港在住ジャーナリスト)

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