最近、職場の女性たちのスカートが長くはないだろうか。もし長くなっていたら、不景気のサインかもしれない。ここでは女性のファッションに関わる変わった指標を紹介する。

官能的な唇は不景気のしるし?

「Lipstick Index」は米高級化粧品ブランド、エスティ・ローダーで1999年までCEOを務めたレナード・ローダー氏が、2000年代前半の不況期に自社の売り上げが増えたことから提唱した指標だ。その理由は不況の時には女性が服や靴の購入を控えて、より安価な化粧品、なかでも口紅を買うというのがその根拠だ。

しかしその後、説に反して口紅の売上高が不況時に減り、好況時に増えた時期もあったため、これは説得力を失った。一方で2010年以降は不況期にネイルアート関連の売り上げが増える現象があり、トレンドがネイルアートに変わっただけではないかという指摘もある。

不景気になると足長美脚が増える

不景気の時ほどヒールの高い女性靴がよく売れると主張したのは、意外にも米コンピュータ大手IBMである。2008年から4年間の何十億というソーシャルメディアの投稿記事を分析した結果だという。

また同社が過去100年の靴のトレンドを調べたところ、1920年代末から30年代初頭の大恐慌時に高いヒールが流行したが、その後の景気回復につれて売れ行きが悪くなった。その代わりに売れたのがヒールの低い靴だったのである。この時だけでなく、その後も景気の波に靴のトレンドが連動していることが確認できたという。

これについて同社は11年11月の公式プレスリリースまで出している。世の中のソーシャルメディアの膨大な数の投稿を分析すれば、かなり確かな予測ができることを、伝えたかったようだ。同社はかなり早くからビッグデータ解析に取り組んでいたのだ。

時代に合わなくなったミニスカート指標

ヒールの高さだけでなくスカートの丈と景気を関連づけた指標もある。だが米有力ビジネススクール、ウォートンの経済学者ジョージ・テイラー教授がこの「ミニスカート指標」を提唱したのは1926年で、「今の時勢には合わない」という声もある。

テイラー教授が提唱したのは、景気がいいとシルクのストッキングが見えるようスカート丈を“短く”して、悪くなるとストッキングを買えないことを隠すために“長く”するという説だった。

たしかにシルクのストッキングは今から90年前には非常に高価だったのだろう。だが今では非常に高価と言えるほどではなく、今では説得力に乏しい。むしろ景気がいいとミニスカートが増えるとの説もあるほどだ。

女性が着飾るのは不況のウサ晴らしなのか?

いずれも信じ難いかも知れないが、景気が悪いと女性はストレス発散のために着飾り、また求人が減るため外見を飾って就職チャンスを増やそうとするのだと仮定すれば、あながち的はずれとも言い切れない。好況時にヒールが低くなるのは仕事が忙しくなりその方が動きやすいからと解釈できるだろう。

ここで思い出すのは、かつてキャバクラでアルバイトをしていた男性の友人の言、いわく「不景気なときにはキレカワな女性がたくさん応募してくる」のだそうだ。彼は盛んに愛人失業説を唱えていたが、不景気になると働き口が減るため、普段キャバクラに応募しない層も応募してくるのかもしれない。

指標は必ずしも正しいものではないが、景気の方向性がわからなくなった時は、街行く女性たちのファッションを参考にしてみても面白い。(上杉光、シニア・アナリスト)