専門性以外でも人を動かせる「影響力」を磨こう
多くのビジネスマンにとって、40代はキャリアの転換期だ。経験とスキルを活かしてさらなるステップアップを図るには、何が必要なのか?人材育成のスペシャリスト・小笹芳央氏が、40代での飛躍の秘訣を語る。
「実務能力」と「調整力」だけでは行き詰まる!
中間管理職を務めつつ、徐々に経営を担うポジションも意識し始める40代。そこからさらにステップアップする人と、伸び悩む人の違いはどこにあるのか。多くの企業で人材育成を指導してきた小笹氏は、そのポイントを2つ挙げる。
「1つ目は、『ポータブルスキル』をどれだけ持っているか。どのような業種や職種でも、どんな環境に身を置いても通用するスキルが、ポータブルスキルです」
ポータブルスキルに対置されるのは、テクニカルスキル=実務能力だ。若手の頃は実務能力が重要だが、年齢とともにその重要性は下がってくる。
「私も、リクルートに入社した頃は、実務能力で仕事をしていました。しかし、課長、部長と役職が上がるにしたがって、実務は部下に任せるようになりました。その後、独立してからは、さらにそれが顕著になりました。部下に任せないことには、とても全部の業務を実務まで見ることはできません」
また、実務能力にだけ頼って仕事をするのは危険でもある。
「異動や転職をすれば、実務能力は役に立たなくなります。たとえ同じ業務を続けていたとしても、新しい知識や技術が登場することで、それまでの実務能力が陳腐化することもあります」
社内人脈や社内文化などに精通することで仕事をうまく進める「組織内特殊能力」を高めすぎるのも危険だと指摘する。
「ポジションの高低を問わず、ある程度必要な能力ではありますが、社外では役に立ちません。また、会社のトップが変わったり、方針転換があったりすると、意味をなさなくなります。変化の激しい時代において本当に必要なのは、やはり、『どこでも通用するスキル』なのです」
それでは、ポータブルスキルとは、具体的にはどういうものなのか。小笹氏は、大きく分けて3つの種類があると言う。
「1つ目は『対課題』のスキル。問題解決やアイデア創出に欠かせないものです。2つ目は『対人』のスキル、つまりコミュニケーション力です。そして3つ目は『対自分』のスキル。セルフコントロールの力、忍耐力、決断力、瞬発力、持続力などが対自分のスキルに当たります」