北海道新幹線は乗車率27%と滑り出し低調

これに対し、滑り出しが低調なのは、3月26日に開業した北海道新幹線だ。JR北海道によると、開業から16日間の1日平均乗車率は27%。開業日こそ61%を記録したものの、20%を下回る日も開業早々に見られた。

1日平均の利用客は5700人。JR北海道は開業前、1日平均5000人の利用を見込んでいた。北海道の春の観光シーズンはこれからとはいえ、利用客はほぼ当初の予想通りに推移し、開業3日間の乗車率が48%だった北陸新幹線を大きく下回った。

函館市内の観光施設は土日だった開業後2日間、それなりににぎわった。五稜郭タワーや函館山ロープウェイは関東や東北からの観光客で例年のざっと1〜2割増になったという。しかし、平日はそれほど増えていない。

JR北海道が15日にまとめたゴールデンウィーク中の北海道新幹線予約率は29%。昨年の海峡線特急列車の予約席数の2.6倍を記録した。最大10連休が見込める日並びの良さが追い風となったが、北陸など過去の新幹線の開業効果と比べると、大きなインパクトを残せていない。

函館市は市内を訪れる観光客の10%増を見込む。日本政策投資銀行が試算した北海道内の経済波及効果は年間136億円。地元の自治体やマスコミはお祭りムードで開業を盛り上げようとしているが、地元の商店主らからは先行きに不安の声が出ている。

北海道新幹線推進室は「北海道にとって行楽シーズンはゴールデンウィークから。空路と新幹線を併用した旅行ツアーも企画されているので、これから新幹線の利用者を伸ばしていきたい」と語った。

利用促進へ北海道を挙げた知恵の結集が必要

北陸と北海道が明暗を分けた理由として挙げられるのが「4時間の壁」だ。東京駅と金沢駅を2時間半で結ぶ北陸新幹線は観光客だけでなく、空路を使うビジネス客も奪い、利用を伸ばしている。

東京羽田空港から石川県の小松空港までは空路で約1時間。小松空港から金沢市の中心部まではバスで約40分かかる。都心から羽田空港までの移動時間を考えると、空路にそれほど大きな時間短縮効果がないだけに、乗り換えなしで金沢市の中心部へ向かえる新幹線のメリットが大きいわけだ。

これに対し、羽田空港から函館空港までの移動時間が約1時間半で、函館空港から函館市の中心部まではバスで30分ほど。都心から羽田空港への移動時間、搭乗待ち時間を考えても、空路だと3時間ほどで函館市の中心部へ到着できる。

新函館北斗駅から函館駅へ向かう接続列車を含め、4時間半ほどかかる新幹線に比べると、時間短縮効果は大きい。新幹線の料金も海峡部を通ることで高額に設定されたため、航空運賃とさして変わらない。

新幹線で5時間かかる東京−博多間は、年間を通して9割以上が空路を利用している。北海道の行楽シーズンが始まるのはこれからとはいえ、このままではせっかくの開業効果を生かせないことも考えられる。

北海道新幹線はJR北海道の試算で年間50億円近い赤字が見込まれている。ただ、赤字を垂れ流すだけの路線としないためにも、利用促進と新幹線活用に向け、北海道を挙げた知恵の結集が求められている。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。