◯誰が、毎月分配型投信を買っているのか?

日本の家計の金融資産の多くの部分は高齢者が保有しており、投資信託の購入層も大部分は高齢者です。
ですので毎月分配型投信を販売する側に言わせれば、お金のない資産形成世代に用はなく、まとまった資金を持っている高齢者に売れるかどうかが大事なわけです。

毎月分配型投信は高齢者に対して、退職金や年金一時金が入りまとまったお金を低金利な日本の銀行預金よりも有利に運用したい、 また収入が減るのでお金が定期的に入ってくることがとても助かるという、2つのニーズを満たしているようです。

毎月分配型投資信託の分配金が元本を崩して支払われることもあることは、(仕組みをきちんと分かっていない人との割合は分かりませんが)ある程度多くの投資家は承知しているかもしれません。それでもなお、預金を取り崩すことと比較すれば、ベターな資産運用の一つであると多くの投資家が判断したため、購入しているということになります。

生活費とは別の口座にお金を移して債券などで運用しつつ、定期的に生活費の口座へ移せば良いのではないかとも思うのですが、生活費とは別の口座にお金を移して債券などで運用を始めることに3%、口座の残高に毎年2%近くを課金されるような仕組みが成り立つのは凄いなあと思います。


◯毎月分配型投信が売れる理由①〜買う人への心理的な効果〜

このように、高齢者のニーズを満たした理由は、「定期的に分配金をもらえると嬉しいという心理上の効果」が大きいのかと思います。上記で色々と説明したように、経済合理性だけではうまく説明できませんが、心理をうまく捉えた設計と営業がされているといえます。

高齢者にとっては(いや、高齢者でなくても)、長期的にじっくりと運用益を積み上げていくより、目先でいくらかでもお金が入ってくると嬉しく感じるのが人間心理といえるでしょう。「預金より良いですよ」「年金の足しにしてはいかがですか」といううたい文句が、日本では投信のメインの購買層である高齢者のニーズに特に上手くマッチしたという側面があるのだと思います。

元本が取り崩されてお金が入ってきているのだと仕組みをきちんと認識をしているとしても、「現に」 毎月お金は入っているし、投信で残っているお金はそれなりには運用されているのだと自分に言い聞かせてしまえます。そうすると解約することもなく、1度買ってしまったらそのまま持ち続ける、という人も意外と多いのかもしれません。

各種の記事等で投信の解約理由を見ますと、元本払戻金(分配金)によって元本部分が減っていることではなく、分配金が減ったことにより、投信からの資金流出が大きくなるというように見えます。心理上の効果は結構大きく働いていると言えるのではないでしょうか。