GT-R,DCT
R35GT-R 2017年モデル(写真=プレスリリースより)

3月23日、ニューヨークモーターショー2016で世界初公開した 日産「GT-R」2017年モデルは歓喜の声で迎えられた。それもそのはず、2007年にV6ツインターボを携え、スカイラインの名を外したR35GT-Rが発表されて以来、日本のみならず海外のユーザーからも熱い視線を注がれてきたモデルだからだ。しかしながら、GT-R 2017年モデルにもやはり3ペダル方式の「MT仕様」がない。昔からのGT-Rファンの中には、3ペダルMTの復活を望んでいた人も少なくなかったのではなかろうか。なぜ、R35GT-Rには3ペダルMT仕様がないのか? 今回はその理由について考えてみたい。

GT-Rに必要なのは絶対的なスピードだ

R35GT-Rに搭載されているのはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)で、その名の通りクラッチを2系統有している。奇数段と偶数段を交互につなぐことで、変速が従来のMTよりも早くなり、駆動効率が良い。いわばクラッチペダルのないMTである。ひいては加速や燃費、環境性能ともに従来のMTよりも優れている。これが、3ペダルMTが採用されなかった大きな理由だ。

GT-Rはエンジンをフロントに、クラッチやトランスミッション、トランスファーをリアにそれぞれ配置した「リアトランスアクスル」という独特の構造を有している。このリアトランスアクスルとは別に3ペダル方式MTの生産ラインを設けるには、莫大なコストがかかることは想像に難くない。GT-Rのようなハイパフォーマンスカーが、現行モデルにおいて1000万円程度で購入できるというのは、たいへんな企業努力の賜物といえる。

他にも「300km/hでクルージング中にクラッチを切ると横滑りを起こし危険である」「これまでのモデルに比べパワーがあるので、クラッチが普通の操作では壊れやすく、DCTのみとなった」という意見も一部にあるようだ。しかし、それらは一般道で想定できない運転状況であるので、3ペダルMTを作らなかった主だった理由には当たらないだろう。

何よりも、手動でシフトチェンジを行うよりも、DCTの方が速い。その上、燃費も良いとなれば、3ペダルMTの設定を考える必要はない。日本が世界に誇るGT-Rに必要なのは、絶対的なスピードであって、それを得る手段としてDCTを採用したということだ。

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ドリフト世界最速記録を更新

日産自動車は4月7日(現地時間)、アラブ首長国連邦のフジャイラ国際空港で開催された特別イベントで、「GT-R」2016年モデルでドリフトの世界最高速となる304.96km/hを達成し、ギネス世界記録を更新した。

記録達成の様子はYouTubeなどの動画サイトでも公開され、大きな話題となっている。このGT-Rには、NISMOのスペシャリストによる支援のもと、GReddy (日本名:トラスト)による特別なチューニングが施され、最高出力は1380馬力に向上、さらにリヤ駆動に変更されたものだ。ドライバーは数々の受賞歴を持つ川畑真人氏が務め、入念なテストを行った。

先に述べた通り、DCTは厳密に言えばクラッチペダルのないMTといえるが、日本の免許制度ではAT扱いとなっている。つまり、AT限定免許のユーザーでもR35GT-Rを運転することができる。その意義は大きい。

かつて、スーパーカーといえば乗り心地が悪い、乗りこなすには特別な運転技術が必要……とのイメージを持たれる側面もあった。しかし、R35GT-Rはデビュー以来走りの性能はもちろんのこと、快適性も兼ね備えたスーパーカーとして熟成を重ねている。サーキットだけではなく、普段の街乗りで軽く流すだけでも特別な気分にさせてくれる。日本が世界に誇るスーパーカーは、いまやAT限定免許のユーザーでも十二分に楽しめる時代となったのだ。(モータージャーナリスト 高橋大介)

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