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麻生太郎財務相の発言から始まった

投資家たちがGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に注目し始めたのは、4月18日に麻生太郎財務相が閣議後の記者会見で、GPIFの動きが6月以降出てくる、と発言したことが根拠となっています。 6月以降というのは、6月に成長戦略改定でGPIFの運用について議論される予定があることを示しています。 また、これに先立つ16日の衆議院財務金融委員会では、GPIFの動きが6月以降に出てくれば外国人投資家が動く可能性が高くなる、という主旨の発言もしていました。

この発言に市場はすぐに反応しました。日経平均が400円超上がったのです。 市場は、GPIFが国債に偏っている資産配分を見直し、株式市場への関心を示していると憶測したのです。 果たして、GPIFは動くのでしょうか。


GPIF効果の仕組みと懸念材料

前述の通り、麻生財務相の発言で日経平均が400円超値上がりするという現象が起きました。これはGPIFが6月に資産配分のポートフォリオを見直し、現在6割を超えている国内債券の運用から、株式投資に資産を割り当てることを示していると、市場が判断したためです。 巨額の資産運用を行っているGPIFが、この憶測通りに株式市場に参入すれば、当然株価は上昇するでしょう。

ただ、GPIFがその巨額の資金で単純なインデックス投資を行った場合、株価全体が上昇するため、経営状態が良くない企業の株価も引き上げ、経営効率が悪い企業の延命をもたらす懸念があります。 つまり、国民が積み立てた年金の原資が、経営効率が悪い企業の延命に利用されてしまう可能性があるということです。 GPIFがこのような事態を避けるには、JPX日経400の様な、優良企業を定期的に選び出した指数に投資する事が必要になります。


GPIF効果は短期間の可能性であることに投資家は注意すべき

GPIFが株式市場に参入する事については、別の懸念もあります。 先ほどGPIFの巨額な資産と書きましたが、現在GPIFが運用している公的年金の積立金は120兆円を超えています。この内、どの程度を株式市場に振り向けるのか、まだ全くわかりませんが、数%としても数兆円規模になりますから、そのインパクトが大きいことは間違い有りません。 問題は、このインパクトを、安倍政権が利用する可能性です。

アベノミクスは決して順調では無く、また消費税増税の悪影響が出ることが間違いないと判断していれば、安倍政権は日銀のさらなる金融緩和だけでなく、このGPIFによる株式市場への参加圧力をかける可能性があります。 勿論、建前上ではGPIFは独立した組織ですが、麻生財務相がうっかり(?)発言したところを見れば、安倍政権が何らかの手段を経てGPIFにリスク資産運用を拡大させようとしていることが予想されます。 ただ、GPIFが株式の買いを行えば、当然株価は上がると予想されますが、問題はその効果がどの程度継続するのか、ということです。 実は短期(数ヶ月)しか効果が無い可能性が高いのです。 例えば1992年の宮沢内閣時に、公的年金の積立金によって株価の買い支えが行われましたが、このときは買ったら上がるが買い終わると下がる、という状態を繰り返しました。 結局、株価というものは、企業の業績改善や、経済状況の改善が見られなければ、あっけなく元の価格に戻ってしまうと言うことを表しています。

つまり、GPIFが株を買い支えようとしても、短期間の効果しか出せない可能性が高いのです。下手をすれば、我々の積み立てた年金の原資が、手練れの外国人投資家へのプレゼントになってしまう可能性もあるでしょう。