若年層,消費実態
(写真=PIXTA)

要旨

◆総務省「全国消費実態調査」は、1959年から続く5年毎調査で、国民の消費生活を捉える上で最も大規模なものである。これから数回に渡り、同調査の最新値等を用いて若年層の消費実態を見ていく。分析では、「お金を使わない」現在の若者と消費意欲が旺盛な「バブル期」の若者を対比する。第一弾では家計収支の動向を示す。

◆1989年以降、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得は男性では増加傾向、女性では2009年まで増加し2014年で減少。バブル期と直近を比べると、男女とも実質増減率が増加しており(男性では1割以上)、決して「今の若者はお金がない」わけではない。

◆一方、若年層では経済状況の厳しい非正規雇用者の増加により、一人暮らしが難しい層も増加。20代の非正規雇用者の手取り収入を推計すると、30歳未満の単身勤労者世帯の可処分所得を下回るが、20代後半で大卒以上であれば月々20万円以上手にしており、バブル期の単身勤労者世帯より手にしている。非正規雇用者でも一律に「今の若者はお金がない」わけではない。

◆30歳未満の単身勤労者世帯の消費支出は2009年頃までやや増加傾向にあったが、2014年で減少。一方、消費性向は1989年以降で低下傾向。また、概ね男性より女性で消費性向が高く、男性より女性の方が消費意欲は強い。

◆今の若者は手元のお金が増えても消費は控える傾向が強まっており、「お金がない」わけではないが、「お金を使わない」ようになっている。

はじめに

2年前に、拙著「若者は本当にお金がないのか?―統計データが語る意外な真実」(光文社新書、2014年6月)にて、総務省「全国消費実態調査」をはじめとした政府統計を用いて若年層の消費状況について分析した。

「全国消費実態調査」は1959年から5年毎に実施されている政府の基幹統計調査で、国民の消費生活を捉える上で最も大規模な調査である。著書執筆時点では2009年のデータが最新であったが、その後、新たな調査結果が公表された。

そこで本稿を皮切りに、これから数回に渡って、「全国消費実態調査」の最新値等を用いて若年層の消費実態を見ていきたい。なお、「お金を使わない」と言われる現在の若者の特徴をより明確に把握するために、消費意欲が旺盛と言われた「バブル期」の若者と対比していく。まず、第一弾の本稿では、家計収支全体の変化に注目する。