貸出動向: 伸び率は横ばいだが、実態は拡大か
日銀が6月8日に発表した貸出・預金動向(速報)によると、5月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.2%で前月(前年比2.2%)から横ばいとなった。ここ数ヵ月、見た目の伸び率は2%台前半で一進一退だが、為替変動等の影響を調整した「特殊要因調整後」の伸び率(図表1)(*1)では上昇基調となっており、直近判明分である4月の伸び率は前年比2.9%と2009年5月以来の高水準を記録している。
この両者の乖離は、主に円高の進行によって外貨建て貸出の円換算額が押し下げられたことに起因する。5月のドル円レートの前年比は4月よりもマイナス幅を拡大(図表3)しているにもかかわらず、貸出の見た目の伸び率が横ばいを維持していることから、為替等の影響を除いた実態としては、伸び率が拡大している可能性が高い。
また、業種別の貸出動向(3月末まで)を見ると、はん用・生産用・産業用機械や不動産の前年比伸び率が高く、かつ12月末時点から伸びが高まっている。とりわけ不動産向けは全体に占めるウェイト(14.4%)が非常に高く、貢献度が高い(図表4)。
なお、3月の新規貸出金利については、短期(一年未満)が0.66%(2月は0.706%)、長期(1年以上)が0.705%(2月は0.867%)とともに低下した(図表5)。短期は14年8月の0.643%に次ぐ過去2番目の低水準、長期はこれまでの最低であった15年3月の0.826を大きく下回り、過去最低を更新した。マイナス金利の導入が貸出金利にも波及している(図表5)。
以上、最近は貸出金利が明確に低下し、実態として貸出の伸び率が拡大、さらに業種別では不動産向け貸出が寄与している。マイナス金利導入による金利低下が、低金利の追い風を受けやすい不動産向けを中心に貸出を促している可能性があり、この一連の動きが今後も続くのかが注目される。
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(*1)特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは4月分まで。
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