米ヤフー

携帯メッセージアプリが、最近注目を集めています。その理由は、無料サービスの魅力に目をつけた大手ネット企業の買収の標的とすることが目的です。例としては昨年終盤フェイスブックが「スナップチャット」に30億ドルの買収案を提示したが拒否され、その後、携帯メッセージアプリである「ワッツアップ」を190億ドルで買収に成功しました。2月には楽天が無料の電話として利用できるメッセージサービスを提供する「バイバー」を9億ドルで買収するなど盛んに行われています。

先日、米ヤフーが携帯メッセージアプリである「ブリンク」を買収しました。米ヤフーが今回買収したブリンクはテキストメッセージや、写真、動画、音声などを個人同士やグループで共有するアプリで、利用者が設定した時間が経つと送ったメッセージが消えるという仕組みが特徴です。買収に伴い、ブリンクはアップルの「iOS」とグーグルの「Android」の両OS向けのアプリの提供を停止するそうです。ヤフーの広報担当が米CNETに明かしたところによれば、チームの7名はカリフォルニア州サニーベールのヤフー本社に移籍し、同社の「スマートコミュニケーション製品」の仕事をするとのことです。つまり、人材獲得目的の買収と言えそうです。

米ヤフーでは2012年7月にマリッサー・メイヤー最高経営責任者(CEO)が就任して以来、小規模の買収を続けています。これまでに買収した小規模企業の数は約40社で、投資金額は12億ドル超だとウォールストリートジャーナルは伝えています。ただしこの買収企業のサービスは、今回のブリンク含めてほとんどが閉鎖されており、また比較的米ヤフーから買収に関する情報が公開されていないことからも、若く優秀なベンチャー企業の人材獲得が主目的と言えるのかもしれません。メイヤーは2012年の就任からモバイル戦略に焦点を当て、社内の人材リソースをモバイルに寄せる一方で、今回のような光るモバイルサービスを提供し始めたベンチャーを拡大する前の小規模段階で買収することで優秀な人材ごと取り込み、米ヤフーの主力モバイルサービスの人員強化を行っているとも考えられます。

昨年終盤にワッツアップを買収したフェイスブックは巨額の利益を出せると見込んでいることや、破格の買収額が動いたにもかかわらず宿敵であるグーグルに渡さなかったことに意味があることから今後もメッセージアプリに対する大手ネット企業の温度感は高いと考えられますが、ひとまず今回の買収の意図は別のところにありそうです。大量の優秀な人材を買収で取り込み狙う先は何か、本来の主力事業である検索サービス分野で新たなモバイルサービスを投入する話も聞こえて来ており、米ヤフーの今後の動向に注目が集まります。

【関連記事】
拡大する楽天経済圏!ソフトバンクの買収戦略との違いから見えてくるもの…

photo credit: Yahoo 701 First Avenue via Wikipedia cc