中古不動産の実需に期待

東京の中心部の「億ション」は、世界の投資家が物色していたわけですし、駆け込み需要を見込んで、2017年春までには、建てて売り切りたいと考えていた業者も多かったでしょう。しかし、駆け込みもなくなり、イギリスのEU離脱ショックも重なり、その思惑は大きく外れました。このため新築市場は、販売価格の値崩れと購入者減少の波に揉まれる可能性が高いのです。

その一方で、実需を伴った中古市場は活況を呈する可能性があります。

日本の場合、流通している中古不動産は、流通全体の13.5%(国交省調査)です。しかし、実際はその比率はもっと高いと推定されており、これが表に出てくると、活況になる可能性が高いのです。国交省も中古市場の充実を図る腹づもりのようです。その他に、介護や医療サービスが付いた付加価値住宅の需要も高まることが見込まれます。

業界では消費税が10%に上がった後の対策として考えている向きもありますが、恐らく前倒しせざるを得ない可能性があります。消費税率が2019年に引き上げられるかどうかも、今や不確実です。2018年の駆け込み需要を待ってはいられないはずです。

世界経済の苦境をどう脱するかという局面が19年まで続く

安倍内閣が主張する「2年半後(まで消費税を上げない)」は、政治的な決断です。もし消費税率の引き上げが2年後とすると10%への引き上げは2019年4月です。これは統一地方選挙とぶつかり、さらには夏の参議院選挙も控えています。その一方で、安倍首相の自民党総裁の任期は2018年9月末までです。総裁任期中に、増税判断にしばられず、与党に有利なタイミングで国会を解散し、勝利することで党総裁任期を延ばし、東京オリンピックに首相として参列できるかもしれないという判断があるかもしれません。

イギリスのEU離脱の手続きは2年後の2019年までかかるとされています。今、世界を見渡した時、今後の世界経済の成長を牽引する国が見当たらないことが最大の課題でしょう。リーマンショック後、牽引役を務めた中国などの新興国の経済成長率は低迷し、非常に不安定な状況です。2009年6月を底に景気が回復してきたアメリカも、この回復基調がいつまで続くのか不透明で、明らかに景気回復のペースがスローダウンしています。今、先行きへの懸念は高まりつつあります。最も懸念されるシナリオは、英国のEU離脱の悪影響とアメリカ経済のピークアウトが重なることかもしれません。その場合、既に金融・財政政策を総動員している主要国にできる追加の経済政策は限られています。私たちはこうした要素を良く考慮した上で、不動産投資を行わなければなりません。

『激動の2019年』に向けて、厳しい時代が続くのです。(提供: 不動産投資ジャーナル

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