中国経済、景気の現状はどうなのだろうか。工業は在庫過多、ゾンビ企業の延命など問題ばかりだ。ただし街中では、あまり不況風は感じない。

先ごろ発表された夏季(第二四半期)全国34大中都市の「雇用需給および人材供給調査」レポートによると、第一四半期に比べ、おしなべて賃金は上昇している。一部業種は需給がひっ迫してきた。小売り総額は堅調、不動産市場は好調、人民元安により輸出にも追い風が吹いてきた。内需化、第三次産業化への構造調整は、それなりに進展している印象だ。

ただし今後の雇用情勢には、新しい視点から注意を払う必要がある。それは「ニ人っ子政策」の影響だ。

二孩政策(ニ人っ子政策)とは

中国の代名詞だった一人っ子政策は2011年から徐々に緩和され、2015年10月の共産党全体会議で正式に廃止された。ただし子供の数は自由、となったわけではなく、二人までとされた。この点、国民生活への国家介入の状況は変わっていない。

13年3月には、衛生部と計画人口計画生育員会の一部が合併し、国家衛生計画生育委員会に衣替えした。悪名高い部署を分割し生存させることで、新政策の体制内準備を整えた。

施行後は各地方が独自の政策を打ち出している。例えば中国における産前産後休暇規定は98日間となっているが、上海市や福建省など多くの地方政府が、これに30日~80日間の延長を加えている。安心して第二子を育ててもらおうという意図である。

日系企業人気、その本当の理由

日系企業は就職先として、ホワイトカラー、ブルーカラーの両方から高い人気を誇っている。その大きな理由は「法令遵守」にある。特に女性求職者には、理想的な就職先だ。法律に則った権利の主張ならほぼ通る。地方政府規定も例外ではない。

例えば某市では、一人っ子政策時代、望まぬ妊娠をしてしまった女性従業員は1週間の有給休暇を与えるという規定があった。日系企業はそれもしっかり守った。人情にも厚く、日系企業ほど安心して出産できる会社はない。こうして日系企業は、優秀な女性従業員を囲い込んでいたとも言える。

その日系企業も、このところ第二子妊娠のラッシュに見舞われている。30代後半から40代前半の安全出産リミットが迫っている年代が多く、社会全体の傾向と同じである。