書籍執筆をしたのに、増刷印税がもらえない!?
私自身、出版社でパソコン関連の雑誌の編集や、印刷会社で取扱説明書の制作などをしていたため、ある程度、書くことに慣れていた。また、転職が決まった直後で有休をまとめて取る予定であった。有給消化の間にあらかた仕事を終わらせてしまえるという目算があったので、引き受けることにした。
ただ、実際には取材先の都合などもあり、転職先の仕事が始まる前に執筆の目処がつかなかった。また、転職してすぐに仕事がぎっしりと入ったため、スケジュール調整にも苦労した。完全な徹夜をしたこともある。
それに対して受け取った報酬は、1400円×5000(部)×0.05(印税5%)=35万である。
参考書籍の購入代金や取材のための交通費(お茶代)などは自腹。これらで5万円近くかかった。執筆にかかった時間は、取材や編集者との打ち合わせを含めるとトータルで約200時間を超えた。時給に直すと効率がよいものではなかったが、仕事自体は楽しく満足であった。
問題は数ヶ月後に発生した。本が増刷されたのだが、私は印税を受け取ることができなかったのだ。知人の言い分としては、「通常、ゴーストライターに払う原稿料は1回だけなので印税という形ではない」というものだ。
たしかにゴーストライターに払われる報酬は印税形式でないことが多いようであるが、依頼されたときは、確かに「印税の半分」と言われた記憶がある。契約書を交わしていなかったことを後悔した。
「性善説」は一度、忘れたほうがいい
転職経験がある人を除き、就職する際にきちんと契約書を交わす人は少ないであろう。まだまだ日本の会社の多数は、お互いを信用する「性善説」の風土がある。仕事の外注先との間でも、長年の付き合いがあるところとは書面を介さないこともある。
しかし、あなたが請負としてライティングやプログラミングの作業を始めるときは、契約条件をしっかり確認すべきだ。ライティングやデザイン、プログラミング関連の制作系の仕事は、品質などを満たさない場合、報酬が支払われないことがあるので、そうした場合、どうなるのかもしっかり確認しておきたい。
また、書いた原稿が著作権を侵害し、発注先が被害を被った場合は、その分の費用を弁償するといったことが契約書に書かれていることもある。下手をすると、もらった報酬以上の損害が発生することもあり得る。契約書をもらったら熟読しよう。