EU
(写真=PIXTA)

2016年6月23日、イギリス国民はEU(欧州連合)から離脱すること選択した。この選択が正しかったのか、それとも誤りであったのかはわからないが、この選択は世界経済に大きな影響を与えることになった。今後EUはどうなってしまうのか、また日本への影響はどうなのかについて考えてみたい。

イギリスがEU離脱を選択した理由は?

EUは、加盟国の政治的・経済的統合を進めていくことを目標とした組織である。

そのため、加盟国は国家の主権も一部制限されることになる。イギリスはEUの前身であるEC(欧州共同体)の時代から加盟しているが、以前から他の加盟国との間で意見の対立がみられ、もともとEUとはなじんでいなかった。しかし、欧州を一つにまとめて世界と戦うという目標を達成するためにはイギリスを抜きにすることはできず、イギリスもまた自国の経済に自信が持てる状況ではなかった。そのため、通貨の統合はせずポンドの存続を認めるなどEU側が譲歩し、イギリスもEUに参加してきたのである。

ところが、2011年以降のユーロ危機の際にはイギリスも少なからず影響を受け、金融危機の再発防止に向けて金融に対する規制強化が進んだ。この規制強化が、金融立国であるイギリスの不満を高めることになった。それに加え、EUの基本条約では加盟国の国民に域内の移動の自由を保障しているため、新たに加盟した東欧諸国などの低所得の移民が仕事を求めてイギリスに流入した。その結果、社会保障費等の負担が増大し、イギリスの財政を圧迫することになった。さらに、ISIS問題による難民受け入れも加わり、EU離脱の気運が高まっていったのである。

EUの発想は先にも述べた通り、ヨーロッパを一つの大きな経済圏とすることで国際競争力を高めていこうというものである。しかし、ヨーロッパといってもイギリスとその他のEU諸国では、実は歴史的背景や法体系が大きく異なる。フランスやドイツは「大陸法系」で、イギリスは「英米法系」である。つまり、思想や法体系的にはイギリスはヨーロッパよりアメリカに近い。大陸法系の特徴は司法に対する不信と立法府に対する信頼で、英米法系の特徴は立法府に対する不信と司法に対する信頼である。そのため、イギリスは規制を好まず、自由を重んじる。ところがEUでは多くの規制が作られており、イギリスからすると窮屈であると感じていたに違いない。そんな時に国民投票が行われたため、離脱派の勢いが強くなっていったのである。

イギリスは議院内閣制の国であり、間接民主制を採っている。したがって、本来は国民に選ばれた政治家が判断をするのが筋である。それなのにキャメロン首相は国民投票をしても離脱派が勝つことはないと考え、安易に国民投票を行ったのである。当時の英国民の不満を解消するには、国民投票の結果を示しEUに存続することの正当性を示したかったのであろう。しかし、蓋を開けたら離脱派の勝利で思惑が外れ、当初離脱派が勝っても辞任しないと公言していたにも関わらず、キャメロン首相はすぐに辞任した。一方、離脱派を主導し勝利した前ロンドン市長のジョンソン氏は与党・保守党首選への不出馬を表明し、同じく離脱派のリーダーである英国独立党のファラージ党首も党首を辞任すると発表した。

政治家として自ら決断すべきことをせず国民投票に逃げたキャメロン首相は、政治家として最低である。また、虚偽の情報で国民を惑わした揚げ句、離脱した責任を問われるのを恐れて前線から離脱するジョンソン氏やファラージ氏も愚かとしかいいようがない。EU離脱が決まってから、「EUとは」と検索している英国民も情けない。国民投票というのは、そういう危険を孕んでいる。