離脱が世界経済に及ぼした影響

離脱の結論の是非はともかく、離脱によって世界経済は大きな影響を受けた。イギリスの国民投票から一夜明けた2016年6月24日の東京株式市場では大暴落が起こり、日経平均株価は前日比1,286円安の1万4,952円となった。同じように、NYダウは、610ドル安い1万7,400ドル、NASDAQは、202ポイント安い4,707ポイントに下がっている。ヨーロッパの主要指標であるドイツDAXは、6月25日に前日より699ポイント安い、9,557ポイントとなっている。

為替相場は、ドル円が一時1ドル=99円台に突入し終値で102円、円ユーロが7円安い113円、円ポンドが18円安い139円になるなど、同日の外為市場も大荒れとなった。

一方、金相場は6月23日に4,549円/gであったものが、7月7日現在で4,841円/gまで価格が上昇している。「有事の金」と言われるように、安全資産である金の需要が高まった結果であるといえよう。イギリスのEU離脱がユーロ崩壊の始まりになるのではないかとの懸念から、一気に不安心理が強まり安全資産へのシフトが起こったわけである。

では、世界経済は今後どうなっていくのであろうか。EUからの離脱によって、イギリスはEU市場へのアクセスがこれまでより難しくなる。今後どのような貿易協定を結ぶかによって関税などの状況は変わってくるが、イギリスの輸出の多くはEU向けなのでその影響は大きいであろう。また、制度というのは安定しているときには何も起こらないが、ひとたび不安定になると一気に不安が増し、景気に影響を及ぼす。イギリスを失ったEUの信用低下は避けられず、イギリスの経済も低迷すれば、ヨーロッパ全体の景気が悪化し始める。そうなればユーロ安になり、EUの購買力が一気に落ちることになる。この点、ドイツは輸出国なのでユーロ安により輸出が増える可能性はあるが、EU全体でみると購買力低下の影響の方が大きいといえる。

これに対して、EUを離脱してもEUメンバー国と貿易ができないということはないし、関税の問題は協定によっていくらでも回避できるからイギリス経済は心配ないと楽観視する人もいる。しかし、EUがイギリスの言いなりになることで、スペインやイタリアのEU離脱の動きを加速させるおそれがある。イギリスに続いてEUを離脱する国が現れれば、ギリシャなど経済的に苦しい国ばかりがEUに残るということにもなりかねない。したがって、そんなに簡単には条件を引き下げることはできないであろう。

米国については、7月の米国雇用統計の結果は好調だったものの、EU離脱の影響を考慮して米国の追加利上げも先送りされる可能性が高まっている。利上げが行われなければ、円高が長引く可能性が高い。そうなれば、日本にとっては厳しい環境が続くことになる。