ノスタルジックカーの文化的・歴史的価値を軽視している?

日本の自動車税制が旧車に厳しいのは、政府が古いクルマを潰して、新車に買い換えてほしいと願っているからだ。「スクラップ・インセンティブ」をつけるので、環境に良い新車に買い換えろ、ということである。それによって自動車産業を取り巻く経済も活性化するという見方だ。

対して「自動車文化を考える議員連盟」の主張は、次のようなものだ。「たしかに、ノスタルジックカーは『経年車』であり、数値上の環境性能は良くないかもしれない。しかし、実際にはノスタルジックカーは移動・輸送の手段としてほとんど運転されることはなく、その意味で実質的に環境負荷は軽微である」「自動車登録からの経年数や型式による環境性能課税を機械的に貫いて、このような自動車にまで重税を課すことは、ノスタルジックカーの持つ文化的・歴史的価値を軽視するものである」「古い物を大切にする心を持ちつつ、我が国の自動車産業の歴史に敬意を払うためにも、我が国の自動車文化を再考し、振興することが必要である」

問題への取り組みは、まだ始まったばかり

筆者は「文化的・歴史的価値を軽視する」との主張には少なからず違和感を覚える。価値観というのは主観的なものであり、そこは議論のテーブルに乗せるべきではないだろう。

あくまで、環境を守るという意味においての効率性の視点で主張すべきと考える。実際問題として、廃棄物を出さずに乗り続けていることへの評価がなく、旧車をまるで排ガスを撒き散らす「犯罪車」扱いする税率に腹立たしい思いだ。

税金を少しでも徴収したいというエリート官僚の気持ちは良く分かるが、だからといって古いクルマというだけで重課を施すやり方が果たして効率的と言えるのだろうか。納得のいかない課税を行って反発を招くより、もっとシンプルな課税方式にして、クルマの維持費を安くし、販売台数を増やし、買い替えを促進させる方が、効率的ではないか。

その意味で、公的な立場から「自動車文化を考える議員連盟」が設立された意義は大きい。問題への取り組みは、まだ始まったばかりであるが、日本でもこのような主張がなされたことに敬意を評したい。(モータージャーナリスト 高橋大介)