治療以外でかかるお金に困惑
Aさんのがんとの長い闘いは始まったばかりだが、治療以外でかかるお金が増えた。抗がん剤治療は副作用もあり、身体への負担が大きい。退院してからも付き添いの家族とともに普段からタクシー通いになってしまった。外出する際も同様だ。
女性の乳がんの場合、乳房を全摘したときに使う専用パッドや下着、抗がん剤の副作用で髪が抜けた場合の医療用かつら(ウィッグ)などの費用を想定しておいたほうがいい。価格はまちまちなので、高額になる場合もある。
がんは進行するにつれ自己負担が大きくなる傾向があることも注意が必要だ。がんのステージは、腫瘍の大きさ、転移の有無などにより大きく5つ(0~4期)に分けられるが、進行がんほど、当然治療の費用は増していく。
心理面の影響も見逃せない。Aさんも覚悟をしていたとはいえ、がんはかなりのショックだった。気晴らしに高額な買い物もしてしまった。医師からは勧められなかったが、治癒促進効果があるなどと宣伝されているサプリメントや健康食品も大量に購入した。いつもがん再発の可能性が頭をよぎり、がんの知識を得ようと書籍などの購入も増え、結局、20万円以上の出費になったこともあったという。
また妻が病弱なため家事をサポートする家事代行サービスも使うようになった。これなども、がんとは直接関係ないものの、がんによる家計負担が増えたと理解していいだろう。
がんと家計の自己負担額は92万円
がんになった場合、自己負担するお金はいったいいくらになるのだろうか。東北医科大学の濃沼信夫教授らが行った、がん患者に対するアンケート調査(2010~2012年度)によると、年間の平均自己負担額は92万円。大腸がんでは約126万円、肺がんでは約107万円、乳がんでは約65万円となっている。
注目すべきは心理的な影響だ。この回答者のうち、3割超の人が健康食品・民間療法にも支出し、平均額は年20.5万円にのぼったという。
「5年生存率」という言葉にあるように、がんの完治の目安は治療後5年間再発しないことだ。しかし、その間は再発予防や検診などで通院しなければならないうえ、心理的な不安も大きい。がんの費用に関しては、治療費は当然だが、家計全体から見てどんな支出があるのか、改めて考えておいたほうがいいだろう。(ZUU online 編集部)