ドンキ,驚安,圧縮陳列
(写真=PIXTA)

ドンキホーテホールディングス <7532> (ドンキ)は安売りで消費者に優しい「驚安の殿堂」として知られるディスカウントチェーン・グループだが、最近は訪日外国人の間にもその評判が広まったおかげで、観光名所化もしているという。安くて楽しいドンキは随所に独自の工夫が施された優良企業でもあり、ますます注目を集めている。

デフレも金融緩和時代も勝ち抜くドンキの強さ

1989年3月に東京都府中市で第1号店を開業したドンキは、2016年6月期まで27期連続で増収増益を続けている。わずか12億円ほどだった売上高は連結ベースで今では7595億円に達し、店舗数も現在では245店に上る。

ドンキのビジネスモデルの特徴は、定番品とともに「スポット商品」を買ってもらいトータルで粗利益を確保する点にある。「スポット商品」とは季節外れや流行遅れになった処分品を安く買い付けたもののことで、その比較的高い利益率で、仕入値の高い定番品の薄利を穴埋めする戦略だ。ちなみに、スポット品はドンキの売上高の3~4割を占めるとされる。

ほかにも圧縮陳列や、オリジナリティの強いPOP(手書きの店頭広告)、迷路のような棚配置など顧客を楽しませる仕掛けとも組み合わせることにより、「いつの間にか粗利益の高い商品を買ってもらう」ことに成功しているのだ。

同社は果敢に買収も行い成長を後押し。2007年に会社更生法を適用され経営再建中だった長崎屋を買収し、MEGAドン・キホーテに転換したことも業績拡大に貢献している。大手総合スーパーだった長崎屋は生鮮食品や生活必需品を数多く揃え主婦やファミリー客が日中に訪れる店舗だった。そこへ若者や深夜に強いドンキのノウハウを投入することにより、グループ全体の客層を広げることに成功した。

ドンキの強さのヒミツ「圧縮陳列」とは?

ドンキといえば圧縮陳列という言葉がすぐに思い浮かぶ。圧縮陳列とは縦に商品を積み上げ圧倒的な品揃え感を演出する手法だ。

さらに棚を迷路のように配置し宝物を探し出すように店内を回遊しながら商品を眺める楽しさを生み出している。

ドンキはこうした演出により「深夜に買い物ついでに遊びに行く場所」というイメージを作り上げ若者や多忙な会社員から強い支持を受け、ユニークかつ合理的なビジネスモデルとして一世を風靡した。

しかしながら、短時間で必要なものを効率的に購入したい主婦層や落ち着いた雰囲気を好む高齢者への、安さ以外の訴求力は弱く、敬遠されがちだった。また圧縮陳列と迷路にこだわり過ぎ十分な避難経路の確保を怠り、火災事故で死亡者を出す不祥事もあった。

その中で、店舗演出に注目されるだけでなく、安さ、品揃え、買い物のしやすさの面からも消費者の支持を高める動きを強化してきた。