「日本製」という言葉が海外消費者に与える「高級感のイメージ」を利用して、新たに海の向こうへの進出に乗りだしたのが葬儀市場だ。

霊柩車製造の老舗、カワキタや特殊リムジンの製造で有名な光岡自動車は、日本の高級霊柩車を中国を含むアジアの新興国に輸出し始め、急増中の中級階層を顧客ターゲットに、市場拡大を狙っている。

費用の高い従来型の葬儀が年々減少している日本

厚生省が発表した2015年人口動態統計によると、日本国内の死亡者は過去最高の129万428人。その7割が75歳以上の高齢者で、全体的には前年から1万7424人の増加を見せていることから、今後も上昇を続けると見こまれている。

高齢化社会にともない成長産業視されている葬儀事業だが、費用のかさむ従来型の葬儀は年々減少傾向にあり、市場における価格競争も激化しているため、想像するほど「楽々儲かる」商売ではないようだ。

光岡自動車は、アジアの中級階層が伝統的な葬儀スタイルを好むこと、中国で新たに導入された排ガス規制の基準に満たない小型トラックなどが、厳しい取り締まりを受けることなどを考慮にいれ、市場の隙間に日本の高級葬儀車への需要を見いだしたという。

8月下旬に東京で開催された「エンディング産業展2016(ENDEX)」では、トヨタの「ヴェルファイア」をベースに、車内レイアウトを自由に変えれる新型霊柩車「ヴェルファイアグランドリムジン」を発表した光岡自動車だが、日本産のハイクラスな霊柩車が、ほかのアジア諸国の消費者も魅了することを期待している。

台湾、インドネシア、マレーシア、香港などでは、小型バスで棺を運ぶという簡易的な葬儀スタイルから、霊柩車を用いた伝統的なスタイルに移行しつつあり、カワキタはこうした時代の流れを察知し、日本の高級霊柩車の需要が高まることを予測。すでにこれらの国と輸出交渉中だという。

市場が縮小傾向にある日本から、土俵を海外に拡大しようとしているのは葬儀車だけではなく、棺桶メーカーにも同様の動きが見られている。