百貨店や専門店街が退去した中心市街地の商業ビルに、市庁舎など自治体の入居が全国の地方都市で相次いでいる。空きビルのまま放置するよりは、一定の利用を見込める庁舎を入居させた方がましと判断したからだ。
地方都市の中心市街地は人口減少や郊外型ショッピングセンターの進出などから空洞化が進み、にぎわいを失うところが増えている。庁舎の入居でにぎわいを取り戻せるはずもないことは明らかなのに、もはや自治体に打つべき手はないのだろうか。
新潟市は中央区役所を商業施設跡へ移転
新潟県新潟市は本庁舎内に置いている中央区役所を古町地区の複合商業ビル「ネクスト21」に移転させる。1月に撤退した核テナント「ラフォーレ原宿・新潟」跡の低層階に入居する考えで、篠田昭市長が7月の市議会全員協議会で明らかにした。
ネクスト21は地下3階、地上21階建ての高層ビルで、1994年にオープンした。低層階に商業施設、中高層階にオフィス、公共施設、飲食店など、19階に展望ラウンジがある。高さ128メートルで、市のランドマークになってきた。
核テナントの撤退後、区分所有者から食の交流、文化の発信などをコンセプトにした再生計画が打ち出されたが、4月末に阿賀野市の不動産会社が所有権を取得、市と協議のうえで庁舎入居の方針が固まったという。
市側は入居時期や方法について明らかにしていないが、区役所の入居部分を市が買い取る考えも浮上している。予定場所が低層階であることから、窓口業務をすることで中心市街地への人の流れを確保するのも狙いの1つだ。
市は本庁舎第1分館と白山浦庁舎が老朽化したため、本庁舎内の部署配置を見直してきた。その中で、中心市街地のにぎわいを確保するため、中央区役所の古町地区移転を検討する考えを示していた。
古町地区は江戸時代から続く市内最大の繁華街を抱えている。古くからの商店街や飲食店が多く、百貨店やファッションビルも多数進出したが、2010年に大和百貨店新潟店が閉店するなどし、徐々ににぎわいを失いつつある。
新潟市総務課は「入居の時期や規模などは引き続き協議していきたい」としているが、ネクスト21には市民の待ち合わせ場所となるファストフード店設置を求める声もあり、移転に向けた交渉が本格化する見込みだ。。