8月の米雇用統計が間もなく発表される。
米雇用者数が7月まで2カ月連続で事前予想を大きく上回ったことから、FRB(米連邦準備理事会)は労働市場に対する自信を深めており、8月も好調な数字が示されれば、9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げも視野に入れる必要がありそうだ。

とはいえ、ウォール街では「11月に大統領選挙を控えたこの時期に、利上げはありえないのではないか」との見方も少なくない。8月の雇用統計が想定内の結果となった場合には、ウォール街を悩ますことになりそうだ。

FRBの責務は「物価の安定」と「雇用の最大化」

FRBでは「物価の安定」と「雇用の最大化」の2つの責務が連銀法により定められており、デュアル・マンデートと呼ばれている。具体的には、2%のインフレ率と完全失業率が目標に置かれている。

現在、FRBが想定している失業率は4.8%である。一般に、インフレ率とはCPI(消費者物価指数)を指し、基調判断には食品やエネルギーといった変動の激しい項目を除いたコア指数が重視される。

CPIのコア指数の前年同月比は、昨年11月以降は2%以上の伸び率で推移しており、7月現在も2.2%上昇となっている。また、FRBがインフレ指標として重視しているとされるPCE(個人消費支出)物価指数をみても、7月は前年同月比で1.6%上昇と目標をやや下回っている程度に過ぎない。

一方、7月の失業率は4.9%と昨年の10月以降は5.0%以下で安定的に推移している。デュアル・マンデートの観点に立てば、9月に利上げをしても問題がない状況にあることが理解できるだろう。

数字は利上げの可能性を示唆している

雇用統計との関連でみると、最も注目される非農業部門の雇用数は、昨年12月の利上げ開始時点の3カ月間で72.4万人(昨年9〜11月、月平均で24.1万人)増加していた。

今回は7月までの2カ月間で既に54.7万人(月平均で27.4万人)増加しており、8月に17.7万人増加すれば昨年12月の利上げの時の数字に並ぶ。事前予想では18万人程度の増加が見込まれており、ハードルは高くない。よほど大きく下振れない限り、9月の利上げをサポートする可能性が高い。

物価の先行きを占うバロメータとして注目度の高い、単位時間当たりの賃金の伸びについても、7月は前年同月比2.6%上昇と昨年11月の2.4%を上回っている。このことを考えると、8月も7月の水準さえ維持できれば、利上げを後押しする材料になりそうである。