低空飛行の米経済が心配?
しかし、それでもウォール街では利上げに懐疑的な向きが少なくない。懸念されるのは、米GDP(国内総生産)成長率の低空飛行が続いている点だ。
米実質GDPは昨年10〜12月期が前期比年率0.9%増、1〜3月期で同0.8%増、4〜6月期1.1%増と3四半期連続で1.0%前後の低い伸びが続いている。
米GDPの見通しについては温度差がある。
たとえばアトランタ連銀が公表しているGDPナウは、7〜9月期のGDPを3.5%増と予想している(8月29日現在)。一方、フィラデルフィア連銀が40の予想機関からのアンケートを集計したフォーキャスター調査(8月12日公表)によると、2016年のGDP成長率は1.5%にとどまる見通しで、これが実現すると2010年以降で最も低い数字となる。
昨年12月の利上げが「低成長を長期化させた一因」との見方もある。ウォール街の市場関係者からは「まだ低成長からの持ち直しが確認できていない現状で追加利上げを議論するのは時期尚早ではないか」と指摘する声も上がっている。
ジャクソンホール後に高まった利上げ確度、ウォール街からは悲鳴も
イエレンFRB議長は8月26日のジャクソンホールでの講演で、「雇用と物価の目標達成に近づいている」と発言しており、FRBがデュアル・マンデートを果たしていることが確認された。イエレン議長は「利上げの根拠がここ数カ月で強まった」とも発言しており、いつ利上げをしても問題ないことを示唆している。
こうした発言を受けて、シカゴ・マーカンタイル取引所が公表しているFOMCでの利上げ確度も上昇した。6月の英EU離脱決定後には10%以下だった9月の利上げ確度が、8月下旬には30%前後まで上昇している。また、同様に6月下旬には1桁台だった12月の利上げ確度も60%近辺まで上昇した。
11月に大統領選挙を控えて株価の先行き不透明感もあることから、ウォール街では「いくら8月の雇用統計の数字が良くても9月の利上げだけは勘弁してほしい」という悲鳴も聞こえるが、ジャクソンホールでの発言は、こうした声への配慮が感じられない。
8月の雇用統計の内容が大方の事前予想の範囲内となった場合、大統領選を見据えて投資家が手控えムードとなるなかで、利上げ観測の高まりを受けて株式市場が混乱する場面も見られるかも知れない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)
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