いわずと知れたことだが、未来がどうなるのかは、誰にもわからない。だからこそ人は未来を予測し、それに備えようとする。専門家と呼ばれる人たちが商売になるのは、「普通の人には見えない未来が見える」と思われているからである。

ただし、専門家になどならなくても、半歩先の未来を見ることはできる。今見えている状況から未来を予測し、今後生きていく上での参考として、「3つのキーワード」にしてここにシェアしたい。

キーワード1:「所有しない」

まず、第1のキーワードは「所有しない」である。今は確かにマイナス金利の影響によって、住宅ローンなどが有利な金利になっているが、だからといって、必ずしも「買いどき」とは限らない。

かつての日本の「土地神話」とは、人口が増えていたからこその現象である。高度成長期にあっては、不動産を買いさえすればほぼ確実に値上がりし、ひと財産をつくることができた。たとえば、1955年からバブル経済が始まる1985年までの30年に地価は56.1倍となり、その間、年率14.4%もの伸びを示した。結局、バブル経済崩壊後に地価は急落し、現在はピーク時の4分の1ほどの価格にすぎない。

これからも「マイナス成長」が予想される環境下では、所有しない方がいいには違いない。もちろん、住宅購入はそれだけが判断材料ではないだろうが、買うならこうした現実も考慮すべきである。ここで大切なのは、「マイホームを買うのが夢」という世間の常識を疑うことである。

キーワード2:「捨てる」

2つ目のキーワードは「捨てる」である。このキーワードは最近、巷でもよく聞くようになった。もともと、「所有する」とは「増やす」発想であり、かつて経済が右肩上がりであった頃の思考そのままである。現在、世界最速で少子高齢化に突き進む日本は、すでに経済の後退期に入って久しいが、大部分の人はまだ「手放す」発想には至っていないように感じられる。

「何でも豊富にあるのがいい」とされる世の中で、筆者が特に憂慮しているのは、昨今の「情報過多」である。確かにインターネットの登場によって、我々の生活は格段に便利になり、人々の情報格差は解消されたように見える。だが、ここまで大量に情報を浴びせられ続けると、人は何が本当に大切な情報なのかがわからなくなる。

メディアでは連日、芸能人の不倫騒動や政治家の辞任劇などが、流されているが、もっと注目すべきニュースはある。その裏で、たとえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2016年4〜6月の間に、またもや約5兆円の運用損を出す見通しとなったニュースなどは、見過ごされがちである。GPIFは2015年度と合わせて計約10兆円の損失を出す見込みだが、その運用金とは我々の年金なのである。氾濫するゴシップ記事や、センセーショナルな話題に惑わされないようにするためには、「本当に必要な情報とは何なのか」を、取捨選択していかなければならない。